<社説>テーマパーク計画 地元に的確な情報提供を


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<社説>テーマパーク計画 地元に的確な情報提供を
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 名護市と今帰仁村にまたがるゴルフ場跡地に整備が進むテーマパークの名称が「JUNGLIA(ジャングリア)」に決まった。北部観光の新たな目玉として期待が高まる。一方で、地元の理解を深めていくことが今後の作業として欠かせない。

 「ジャングル」に由来する名称からも分かるように、やんばるの世界自然遺産登録地にも近い立地を生かした施設だ。豊かな自然と最新のテクノロジーを掛け合わせ、「自然への没入感と贅沢(ぜいたく)感」を得ることができるテーマパークを目指すという。亜熱帯の豊かな自然をテーマに据えることでインバウンド(訪日客)への訴求力も見込まれる。
 地元への波及効果も期待される。運営会社は雇用促進や地元産品の活用について名護市、今帰仁村と包括連携協定を締結している。名桜大とは観光人材育成で連携する。うまく循環すれば地方展開のモデルとなろう。
 一方で、気になるのが地元への情報提供の少なさだ。ことし2月の着工に向けても地元住民への説明会が開かれたが、パークの詳細は明らかにされなかった。
 これだけの大事業である。地元の理解が深まらなければ展開や継続は難しい。運営会社は協定などで地元との連携を図るほか、沖縄の貧困の問題の解決につなげるとも強調する。国際的な観光地としてのブランド力の強化に資するとも言う。これらを効果的に推進するのであれば「地元との協業」を事業展開の眼目とすることを提案したい。
 地域の産品活用や人材育成など、協業にもさまざまなレベルがあろう。基本となるのは、地元住民の十分な理解と協力の下、沖縄と共に育ちゆく事業とすることだ。共存共栄であり、事業を住民が誇りあるものにすることだ。その実現のためには的確な情報提供と理解を得るための努力が最低限の必要条件となる。
 テーマパークが売りとする自然環境をいかに守っていくのかも大きな課題として残る。住環境への影響をどれだけ軽減できるのかも重要だ。過剰な集客が引き起こす交通渋滞や騒音など、住民生活に悪影響が出るオーバーツーリズム(観光公害)が世界各地で問題化している。
 自然を守り、観光公害をいかに防ぐか。県行政や地元自治体、業界とも連携して知恵を絞り、持続可能な観光を追求しなければならない。開業前の今だからできることもあるはずだ。これも地元との協業の一端と言える。
 国連世界観光機関(UNWTO)は観光公害について「観光地の住民生活や、旅行者の体験の質に過度に与える負の影響」と定義する。つまり、観光地の住民だけでなく、訪問客をも不快にさせるのだ。リピーターを生む魅力的な施設であるためにも、地元に十分な説明を尽くし、理解を得る努力を重ねなければならない。