<社説>オスプレイ屋久島沖墜落 国内全面撤去しかない


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<社説>オスプレイ屋久島沖墜落 国内全面撤去しかない
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 墜落を繰り返す欠陥機オスプレイが上空を飛んでいる限り、地上に住む私たちは常に生命の危機に直面している。県民、国民の生命・財産を守るため、国内からオスプレイを全面撤去するしかない。

 米軍横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが29日午後、鹿児島県屋久島沖に墜落した。乗組員6人を乗せ、嘉手納基地に向かう途中で起きた事故である。
 墜落地点は屋久島の東側約1キロ付近である。現時点で墜落原因は分かっていない。この海域は地元漁民の漁場で、墜落時も漁船数隻が操業していた。漁船や地上に被害が及ぶ可能性があった。
 ところが、今回の事故について宮沢博行防衛副大臣は「不時着水」と表現した。米側の説明を踏まえたものだが、従う必要があるのか。危機感が薄いと言わざるを得ない。
 日本政府は米側に対し、普天間飛行場に所属する海兵隊仕様のMV22を含め、日本国内を飛行するオスプレイの即時飛行停止を求めるべきだ。さらに国内基地所属機の全面撤去に向け、対米交渉を進めなければならない。国民の生命を守るべき主権国家として当然の義務である。自衛隊のオスプレイについても退役を検討する必要がある。
 オスプレイは試験飛行段階から事故が頻発し、「未亡人製造機」などと呼ばれてきた。トラブル発生時に機体を軟着陸させるオートローテーション機能の欠如は従来から指摘されてきた。駆動システムに深刻な損傷をもたらすクラッチの欠陥も判明している。構造的欠陥がある輸送機は本来、飛んではならない。
 県民の強い反対の声を無視し、「抑止力向上」を理由に普天間飛行場にオスプレイが強行配備されたのは2012年10月である。約4年後の16年12月、普天間所属機が名護市安部の沿岸に墜落した。17年8月にはオーストラリア東部海上に普天間所属機が墜落し、3人が死亡した。県内離島や奄美の空港への緊急着陸も繰り返されてきた。
 問われるのは墜落事故や緊急着陸が起きた際の日本政府の対応だ。米軍に対し、飛行停止や原因究明を強く求めてきただろうか。
 民間機であれば、何らかのトラブルが起きた場合、全面的な飛行停止などの措置を取り、原因究明や整備が実施される。ところが米軍機の場合、重大な事故が発生しても、その原因を明らかにしないまま米軍は飛行訓練を再開してきた。あしき二重基準である。政府は米軍の身勝手を許してはならない。
 欠陥機はいつ、どこで墜落するか分からない。普天間飛行場を名護市辺野古に移設しても、沖縄にオスプレイの飛行経路がある以上、危機は続くのだ。新基地建設は危険性の除去にならない。
 オスプレイは沖縄、日本の空から去らねばならない。日本の主権に関わる問題であることを政府は認識すべきだ。