<社説>墜落機部品引き渡し 原因究明を放棄するのか


<社説>墜落機部品引き渡し 原因究明を放棄するのか
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 どこまで米国に従属しなければならないのか。国民の生命財産を守るため、政府は毅然(きぜん)とした態度で臨むべきだ。

 鹿児島県屋久島沖の米空軍輸送機CV22オスプレイ墜落事故で、第10管区海上保安本部は、海保が回収した機体の一部を米側に引き渡した。
 米軍が関わる事件・事故に対する日本の捜査権を制限する日米地位協定が根拠だ。機体引き渡しについて海保関係者は「地位協定により、米側から要請があれば応じざるを得ない」と説明している。
 墜落事故の重要な物証である機体を米側に引き渡すことによって日本側による原因究明は事実上不可能となった。原因究明を放棄したことにならないか。
 部品を回収した海保に対し、米側からどのような要請があったのか。引き渡しに関して外務省や防衛省、国土交通省など関連省庁で議論があったのか、国民の前に明らかにしてほしい。日本の主権に関わる問題である。
 同じことは沖縄で繰り返されてきた。事故現場を米軍が治外法権の状態に置き、警察や海保、行政を含む地元関係者を排除してきたのだ。
 2004年8月、普天間飛行場所属の大型輸送ヘリコプターCH53Dが沖縄国際大に墜落した際、米軍は現場を封鎖し、機体を搬出した。16年12月に普天間飛行場所属のMV22オスプレイが名護市安部に墜落した際も米軍が機体を回収している。17年10月に普天間飛行場所属のCH53Eが東村高江に不時着炎上した時も同様だ。いずれも県警や海保は機体が現場に残っている間は現場検証ができなかった。
 一方、米軍機墜落事故で米側が日本の警察の現場検証を認めた例がある。
 1968年6月、福岡市の九州大学に米軍機ファントムが墜落した事故や77年9月、横浜市にファントムが墜落した事故、88年6月に普天間飛行場所属のCH53が墜落した事故では米軍と地元警察が合同で検証しているのだ。
 なぜ、過去の経験を生かすことができなかったのか疑問だ。もちろん日米地位協定は抜本改正されなければならないが、それを待たずとも、機体の扱いや現場検証について米側と交渉すべきではなかったか。このことも含め、機体引き渡しの経緯は厳しく検証されるべきである。
 オスプレイ墜落事故は日本の従属的な姿勢を浮き彫りにした。宮沢博行防衛副大臣が米軍の説明に従い、墜落を「不時着水」と説明したのは、その一例だ。国内のオスプレイ墜落事故で初めて死亡者が出たにもかかわらず、飛行停止を米側に明確に求めていないのも許しがたい。
 構造的欠陥が指摘されているオスプレイが日本の上空を飛び続ける以上、墜落の危険が続く。住民を巻き込む悲惨な事故が起きてからでは遅い。政府は飛行停止と国内からの撤退を明確に求めなければならない。