<社説>公共インフラ整備 沖縄振興ゆがめる動きだ


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<社説>公共インフラ整備 沖縄振興ゆがめる動きだ
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 1972年の施政権返還から今日まで続く沖縄振興をゆがめる危険な動きだ。沖縄の豊かさや県民の幸福につながるものとは言いがたい。

 防衛力の強化を目的とした公共インフラ整備の対象となる空港・港湾整備が沖縄に集中している。防衛省や国土交通省など関係省庁の担当者が頻繁に来県し、自治体への説明を重ねている。

 「台湾有事」への対処を名目とした南西シフトは自衛隊増強だけではない。民間空港・港湾整備の形で着々と進められようとしているのだ。

 昨年12月に政府が閣議決定した「国家安全保障戦略」は、訓練や有事を念頭に、空港や港湾など公共インフラ整備の必要性と、政府の横断的な仕組みの創設による整備促進を明記している。

 空港や港湾などのインフラ整備は本来、県民生活の利便性向上、地域経済活性化のために進められてきたのではないか。現在、政府が進めようとしているインフラ整備はまさに沖縄の軍事拠点化を意図したものだ。

 施政権返還後に始まった沖縄振興の諸施策は、離島県であり広大な基地を抱えるという沖縄固有の特殊事情に対応し、本土との格差是正を目指すものだった。根底にあるのは沖縄戦による甚大な戦災とその後の27年にわたる米統治に対する「償いの心」であった。今日まで続く沖縄振興の施策で社会資本は整備され、県民の生活水準は一定の向上が図られた。

 有事を想定し、政府が推し進める沖縄の軍事要塞(ようさい)化は「償いの心」とは正反対のものである。沖縄を再び戦場とするつもりなのか。このような沖縄振興の歪曲(わいきょく)を許すわけにはいかない。

 安全保障上、必要性が高いインフラ施設を「特定重要拠点」として政府が優先的に予算付けを検討しているのは13カ所である。空港は那覇、久米島、宮古、下地島、新石垣、波照間、与那国の7カ所。港湾は那覇、兼城(久米島町)、中城湾、平良、石垣の各港と与那国町比川地区への新設港湾の6カ所である。

 空港は滑走路が短く大型機の発着に限界があること、港湾は海深が浅く艦船などの接岸が難しいことなどから整備対象となっているとみられる。対象施設の中には民間施設としては十分な規模を満たしているものもある。まさに軍事増強を目的とした施設規模の拡大なのだ。

 有事の際の住民避難のため空港・港湾の大型化は必要との意見もあろう。しかし、民間インフラの軍事利用は住民保護どころか、相手国の標的となる可能性がある。そうなれば、住民避難の施設としては危険である。不断の外交努力で有事を回避することが政府の役割ではないか。

 本来の沖縄振興とは無縁のインフラ整備を安易に受け入れてはならない。県や関連する自治体に慎重な対応を求めたい。