<社説>辺野古埋め立て5年 危険除去抜本策まとめよ


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<社説>辺野古埋め立て5年 危険除去抜本策まとめよ
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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に向け、政府が辺野古沿岸部への土砂投入を開始して5年となった。

 沖縄防衛局によると、10月末時点における辺野古側の土砂投入量は埋め立てに必要な土砂約319万立方メートルの99.5%に当たる約318万立方メートルである。辺野古新基地の埋め立てに必要となる全体の土砂量の15.8%に当たる。
 8割強の埋め立てが未完のままだ。今後、大浦湾側に存在する軟弱地盤の影響で工事が長期化する。辺野古新基地建設の完成時期について、在沖米軍幹部は「早くて2037年になる」と述べ、それまでは「普天間飛行場は維持される」としている。新基地の完成後も普天間を継続使用する可能性も示唆している。
 危険性除去は待ったなしである。日米両政府は一日も早い普天間飛行場の機能停止を目指し、新基地建設に代わる抜本的な危険性除去策をまとめるべきだ。日本政府が繰り返す「辺野古移設が唯一の解決策」は説得力がない。
 辺野古新基地建設は危険性除去と抑止力維持の両立を図る計画だと政府は説明してきた。だが、現時点で完成時期がここまで遅れる以上、効果的な危険性除去策とは言い難い。では、抑止力はどうか。
 抑止力向上を名目に12年、普天間飛行場に強行配備された垂直離着陸機MV22オスプレイは現在、屋久島沖でのCV22の墜落事故を受け、飛行を停止している。そのことによって抑止力は低下したのだろうか。輸送機であるオスプレイにそもそも抑止力を向上させる能力などないのだ。
 日本政府が「抑止力論」に固執し続ける以上、普天間問題の解決は困難だ。危険性除去と抑止力向上という理屈は破綻している。
 手続きも問題だ。沖縄防衛局は07年の時点で軟弱地盤の存在を把握しながら、追加調査をしないだけでなく問題をひた隠しにしたまま埋め立てに踏み切った。その後、工事の設計変更を申請した。
 国のこうした不誠実な対応を問題視した県が大浦湾側の埋め立てに向けた工事の設計変更を不承認とすると、国は有無を言わさず設計変更を県に代わって承認するための「代執行訴訟」を提起した。その判決が20日に言い渡される。
 巨額の血税が投じられ続けている現状も問題だ。国の示す総工費は3500億円以上から約9300億円と約2.7倍となった。軟弱地盤の状況によっては工費がさらにかさむ可能性がある。県独自の試算で約2兆5500億円かかると見込んでいる。壮大な公金の無駄遣いではないか。
 オスプレイの発着が止まり、普天間飛行場の周辺の騒音は減った。欠陥機飛行による危険性もない。宜野湾市民、県民が求めているのはそのような環境だ。
 普天間飛行場を閉鎖し、新基地建設を断念することが危険性除去の最善策である。