<社説>裏金疑惑議員聴取 徹底捜査で全容の解明を


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<社説>裏金疑惑議員聴取 徹底捜査で全容の解明を
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 自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で、東京地検特捜部は、安倍派議員への任意の事情聴取を始めた。政治資金規正法違反の疑いで調べている。近く安倍派側を強制捜査する方針という。全容解明に向けて徹底した捜査を求めたい。

 国会議員からの事情聴取に至ったことを、自民党は重く受け止めなければならない。
 特捜部の事情聴取は、高額の還流を受けた議員を対象としているとみられ、その人数は数十人に上る見通しだ。
 関係者によると、安倍派では政治資金パーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を、派閥側の収支報告書に記載せず議員側に還流。受け取った議員側も収入として書いていなかった。特捜部は議員本人への聴取で不記載に関する認識を確認する意向だ。
 還流分は最近5年間で5億円に上るとみられる。安倍派の宮沢博行衆院議員は、還流分を収支報告書に記載しなかったと説明し「派閥から『記載しなくていい』という指示があった」と報道陣に語った。派閥、所属議員とも裏金と認識していたのだろう。安倍派の会計責任者が、パーティー券の販売ノルマ超過分を議員秘書に還流した後、議員本人が受領したか事務所に確認していたという。
 収支報告書への不記載は犯罪だ。政権与党・自民党の最大派閥が、法を犯す行為を組織ぐるみで行っていたのなら、関わった全ての国会議員は説明責任を果たし、違法行為に手を染めていたことを認めるべきだ。
 自民党の派閥を巡っては、過去にも「政治とカネ」の問題が起きている。日歯連の迂回(うかい)献金事件では、派閥がその舞台となった。政治資金規正法改正などの契機にもなったが、あしき派閥政治は綿々と続いている。
 派閥が裏金をつくるための集団であるならば、「政策研究」を名乗ってもよいのか。全容解明とともに、国民から疑念を持たれる派閥は解消も視野に、その在り方を見直すべきだ。
 岸田文雄首相は14日、松野博一官房長官ら安倍派の4閣僚を事実上更迭した。党側では萩生田光一政調会長らが辞表を出した。内閣と党の要職から安倍派を一掃した形だが、国民の信頼回復には程遠い。松野氏ら安倍派中枢の各氏は、自身の疑惑について何も説明していない。国民に説明責任を果たさなければ、今回の更迭は野党からの疑惑追及逃れと言わざるを得ない。
 「政治とカネ」の問題を繰り返さないためには、企業・団体によるパーティー券購入という政治資金規正法の抜け穴をふさぐことが必要だ。パーティーは自民党だけでなく、野党も開催してきた。物価高騰にあえぐ国民からは、政治そのものへの不信が渦巻いている。岸田首相や自民党、野党も、今こそ信頼回復のための抜本改革に取り組むべきだ。