<社説>健康保険証来秋廃止 医療現場大混乱は必至だ


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<社説>健康保険証来秋廃止 医療現場大混乱は必至だ
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 岸田文雄首相が「予定通り健康保険証の発行を来年秋に終了する」と表明した。共同通信が16、17日に実施した全国電話世論調査では、健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に一本化する方針に対して「撤回するべきだ」が41.7%と最多で、次いで「延期するべきだ」31.4%だった。「予定通り」は24.6%にとどまった。国民の理解を得るには程遠い状況だ。

 全国保険医団体連合会(保団連)は、機器やシステムの不具合を含めマイナ保険証はトラブルが絶えないとして、健康保険証廃止に反対し続けている。強行すれば医療現場の大混乱は必至だ。医療情報が他人と入れ替わっていれば命に関わる。万全でなければ運用はできない。来秋の健康保険証廃止は撤回すべきだ。
 岸田首相は、廃止後1年間の猶予期間を設けること、マイナ保険証を持たない人に「資格確認書」を発行することなどを「国民の不安払拭のための措置」とした。河野太郎デジタル相は会見で、11月末までの総点検で「ミスは0.01%で極めて少なかった」「不安を払拭するための措置を取るという対応を取ったので廃止する」「イデオロギー的に反対される方はいつまでたっても不安だとおっしゃる」などと強弁した。
 保団連は14日、「現場のトラブルはなんら解決しておらず、『問題がない』と判断できる状況にはない。このような状況で現行の健康保険証の廃止を強行するとの表明は言語道断であり、強く抗議する」との声明を発表した。
 併せて、10県1907の医療機関への調査結果を発表し、10月以降、1113件、58%でトラブルがあったとした。複数回答で「名前や住所に伏せ字が出る」755件、「資格情報が無効」558件、「カードリーダーでエラーが出る」434件が多かった。「他人の情報がひも付けられていた」「間違った医療情報がひも付けられていた」という深刻なものもそれぞれ20件、19件あった。
 保団連の住江憲勇会長は河野デジタル相の会見に出席して「医療情報のひも付けミスは、一件たりともあってはならない。個人情報、とりわけ生命、健康に関わる」「不安払拭がされないのに推進することこそがイデオロギーでは」と批判した。臨時国会で首相は延期に含みを持たせる答弁をしていたが、「予定通り」と表明したのは閉幕前日の12日だった。国会論戦を避けたとしか見えない。河野氏の会見も傲慢(ごうまん)の極みだ。
 今回の世論調査で岸田内閣の支持率は22%まで落ち込んだ。健康保険証廃止に対する厳しい世論も要因である。問題はひも付けミスだけではない。システムの不具合や意図的な情報持ち出しも防げていない。だから利用率が4%しかないのである。国民の声を聞かない強権政権は退場してもらいたい。