<南風>台湾の小さな親善大使


社会
<南風>台湾の小さな親善大使 宮城雅也、県小児保健協会会長
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 新型コロナパンデミック前は、海外から沖縄へ観光客が押し寄せていた。一般的に観光客は旅行保険に加入している。しかし妊婦の旅行者で、お腹の赤ちゃんまで旅行保険に加入していることは少ない。

 台湾からの若い夫婦は妊娠中で異常なく出発したが、沖縄旅行中に突然陣痛(切迫早産)が始まった。緊急に対処したが、妊娠27週、800グラム弱の超低出生体重児が生まれた。こども医療センターの新生児集中治療室へ入院したが、医療費は1日約10万円で保険適応外の実費払いとなる。

 長期入院で莫大な経済的負担などを抱え、若い夫婦は途方に暮れた。すぐに台北駐日経済文化代表処那覇分処(台湾の領事館)に諸手続き・通訳などの支援を依頼した。日常の衣食住は前回述べた「がじゅまるの家」でスマホアプリの翻訳機能を活用し、安心できる生活支援に総力を尽くした。

 他国の同じような事例がSNS上の誹謗(ひぼう)中傷で炎上したので、マスコミには伏せていた。そこで琉球華僑総会が本県を中心に、口伝えで寄付を募ると約2千万円集まり医療費などの経済的支援ができた。

 出産予定日に体重1600グラム(一般は3千グラム)と小さいが、酸素投与も不要となり、一刻も早く祖国に帰す準備が始まった。一般的には未熟児(病児)はチャーター便(諸経費1千万以上)で対応するが、各方面との交渉を重ね、台北医学大卒の医師(私)と看護師が同伴することで、台湾の国際線定期便で搬送できた(生じた多額の寄付余剰金は次の外国旅行者緊急時へ)。深夜の台湾高雄栄民総医院に無事入院できた。

 その子が2歳になったとき、ご両親と共にお世話になったお礼を述べたいと沖縄に来た。正常に発達した台湾から小さな小さな親善大使が、大きな感動を持ってきた。今度はマスコミにも遠慮なく報道できた。

(宮城雅也、県小児保健協会会長)