<南風>薬膳師はホームドクター


社会
<南風>薬膳師はホームドクター
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

薬膳は、決して特別の料理ではない。例えば料理にクコの実を使ったり、中華料理だったり、薬草を使ったりする料理を薬膳料理と勘違いしている方は多いと思う。薬膳料理とは、季節の食材と、食べる人に合った食材をうまく組み合わせて体調に合わせて調理することが薬膳料理である。

 薬膳を取り入れるためには、中医学の基礎知識が必要になり、学ぶ内容には診断学という項目がある。中医学の医学は3千年前の医学といわれ、その時代には人の目や耳鼻を使い、人の身体をのぞき診断を行っていたようだ。

 例えば目を使う診断方法には、顔色・姿勢・目の動きを見る。鼻を使う診断では尿や便、口、体などの臭いをかぐ。耳を使う診断方法では声の大きさや言葉数やせき、呼吸の音などが対象だ。舌を診て内臓の状態を確認し、総合的に体の様子を判断する。

 一番重要なことは、本人の訴えに耳を傾けて症状を確認することだ。三因制宜(さんいんせいぎ)という、人・時・土地といった考え方が人の体をのぞく時に必要になる。高齢者か若いのか、元気なのか体力がないのか、寒い環境か暑い環境なのかなど、その人がどのタイプかを考え、体質改善に向けた食事を提供していく。私のおばーも、このような考え方があり、私の顔色を見て、これ食べなさい、このお茶を飲みなさい、あんまりこんなのは食べるな、などと言われた記憶がある。

 大きな病気になる前に、食物で体の調子を整え、未然に予防することが薬膳の考え方である。私は食を提供する人はホームドクターだと考えている。おいしいということは最も大切だが、次に、体が喜ぶことも重要だと思う。その点、琉球料理は総合的においしい、身体が喜ぶ食材の組み合わせや調理方法が考えられている。

(宮國由紀江、国際中医師)