<南風>東洋のマルタ島


社会
<南風>東洋のマルタ島
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 大学生だった2001年11月、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領の講演会を聴きに那覇市民会館に足を運んだ。冷戦を終結させ、今日につながるグローバル化の流れを作ったゴルバチョフ氏が平和の大切さについて熱く語っていたのが強く印象に残った。

 講演会は那覇市制80周年を記念して行われた。実現に向け指導力を発揮したのは当時那覇市長を務めていた翁長雄志氏だったことは後に知った。翁長氏は県知事を務めていた15年から3年連続で私の職場の訪中代表団に参加し、中国との安定的な関係の構築や経済交流の強化に尽力された。

 3回の訪中のうち2回会談に応じ意見交換をした中国側の相手は李克強元総理だ。この3人はともに鬼籍に入られたが、国や民族の垣根を越え、アジアや世界の平和のために全身全霊を傾けられた。その思いは今を生きる世代にも引き継がれていくだろう。

 現在、アジアには紛争の火種が依然として存在する。この火種をいかに消していくかは世界共通の課題だ。特に異なる考えを持つ相手との対話を継続していくことは非常に重要であり、対話の質を高めるためには相手のことを理解しようと努めなければならない。

 粘り強い対話の末、ゴルバチョフ氏とブッシュ元米大統領が冷戦の終結を宣言した場所はモスクワでもワシントンでもなく、地中海に浮かぶマルタ島だ。沖縄は、新冷戦を終わらせ、世界を平和に導く「東洋のマルタ島」になってほしい。沖縄の島々や人々にはその力が宿っていると信じる。

 今回が最後のコラムとなった。執筆日は12月13日、南京大虐殺の日だ。深く反省し、惨劇を繰り返させないことを主権者の一人として誓い、日中友好と世界平和の両立を願いながら筆を置く。拙文に半年間お付き合いくださりありがとうございました。

(泉川友樹、日本国際貿易促進協会業務部長)