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美術家の労働環境議論 東京で労働組合がシンポ


美術家の労働環境議論 東京で労働組合がシンポ シンポジウム「アートワーカーの〈未来〉をめぐって」の様子=東京・上野の国立西洋美術館
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 美術家の地位向上を目指し、昨年結成された現代美術家の労働組合「アーティスツ・ユニオン」主催のシンポジウム「アートワーカーの〈未来〉をめぐって」が東京・上野の国立西洋美術館で開かれ、美術家の労働環境の在り方が議論された。

 美術分野の報酬を改善するためのガイドラインの策定を目指す美術家のネットワーク「art for all」による2022年の調査では、約半数が200万円未満の収入と回答。メンバーで、アーティストの村上華子さんは「プロとして活発に活動するほど貧しくなっている。持続可能な活動を目指してより多くの人が連帯することが必要」と語った。

 沖縄で、演劇や音楽なども含む文化芸術活動に従事する人の労働実態の調査を行う「アーティストの条件企画チーム」のメンバーで、写真作家の寺田健人さんは、1~2月に地元の文化施設と共同で行ったアンケートを紹介。「ハラスメントに当たる行為をされた、あるいは見たことがある」と答えた人が約8割に上ったとし、「県内のアート業界は人間関係が狭く、仕事への影響を懸念し、被害を受けても声を上げにくい」と指摘した。

 アートと労働の問題を研究する共立女子大教授(芸術社会学)の吉沢弥生さんも登壇。「声を上げることは大きな一歩で心強い」としながらも、労働組合の活動が理解されにくい日本の現状にも言及した。

 報酬を支払う立場から参加したのは、滋賀県立美術館ディレクター(館長)の保坂健二朗さん。「社会にはアートが必要で、美術家にきちんと報酬を払うべきだということを、(社会で)合意形成するための土壌を美術館がつくらなければならない」と話した。

(共同通信)