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ハラスメント「された」「見た」8割 芸術従事者の実態調査 脅迫、性被害…深刻な環境が浮き彫りに


ハラスメント「された」「見た」8割 芸術従事者の実態調査 脅迫、性被害…深刻な環境が浮き彫りに 那覇文化芸術劇場なはーと=那覇市久茂地
この記事を書いた人 アバター画像 中村 優希

 那覇文化芸術劇場なはーととアーティストの条件企画チームが実施した、県内の文化・芸術分野の活動環境に関する実態調査では、80%が「ハラスメントに当たる行為をされた、見たことがある」と回答し、担い手の大半がハラスメントに悩んでいる深刻な現状が浮かび上がった。

 加害者は、上司・先輩・マネジャー(35人)、監督・演出家・スタッフ(30人)、教員(30人)、プロデューサー・キュレーター(24人)と大半が立場が上の人だった。

 ハラスメントの内訳は、パワーハラスメントを受けたり見たりしたと回答したのは66%。アカデミックハラスメントは43%、セクシュアルハラスメントは41%だった。

 体験または見聞きしたハラスメントは脅迫や侮辱など「精神的な攻撃」が117人中74人に上り最多。続いて、仲間はずしや無視などの「人間関係の切り離し」「容姿や年齢を話題にした・からかわれた」「性経験・性生活の質問・卑猥な話や冗談」はそれぞれ約3割いた。「レイプをされた」との回答も11人あり、深刻な実態が明らかとなった。

 自由記述では、仕事の依頼で金額を安く提示され断ると罵倒された、「狭い業界ですからね」と言われて契約を一方的に切ろうとされるなどの回答があった。制作費が出ると聞いていたが支払われなかったなど、対価を得ずに働いたとの記述も多かった。

 音楽団体の社長や監督など上の立場の人から受ける性被害や、客のつきまといや作品の購入をちらつかせて食事に誘われるケースもあった。

 ハラスメントを受けた際に「誰かに相談した」と回答したのは48%にとどまり、相談相手は「友人・知人」が最多の43人だった。「医師カウンセラーなどの専門家」は8人で、「自治体やサポート団体の相談機関」は1人のみだった。

 相談しなかった理由について「相談しても解決しないと思った」が27人と最多で、続いて「問題が大きくなると面倒」が20人、「人間関係や仕事に支障が出る恐れがある」が19人だった。

 「性被害の相談窓口に行ったことがすぐに周囲に広まった」との記述もあった。相談窓口の仕組みが整わず、泣き寝入りやセカンドハラスメントにつながっているケースも出ているとみられる。

 アーティストの条件企画チームの寺田健人さんは「公の相談窓口に行っても本当に解決に向かうのか分からず、結局身近な人に相談する状況だ。取り組むべき課題がたくさんある」と話した。

(中村優希)