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注意喚起「紙」が最強 お年寄り標的の「押し買い」被害ゼロに


注意喚起「紙」が最強 お年寄り標的の「押し買い」被害ゼロに 「押し買い」について高齢者に注意喚起するボランティア(右)=2023年11月、嘉手納町
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 家を訪れ、貴金属を安値で強引に買い取る「押し買い」業者が、事前に在宅状況などを電話で尋ねる「アポ電」が増えている。嘉手納町は、パソコンやスマートフォンに不慣れなお年寄りには“紙”での注意喚起が最適と判断。チラシを配り続け、昨年は被害をゼロにした。担当者は「安易にデジタルに頼らず、世代ごとに最も効果的な手法を考えたい」と語る。

 「不要品はないかと尋ねる電話が来た」。昨年9月27日、東京都の押し買い業者からアポ電がかかってきたとの相談が、相次いで住民から嘉手納町役場に寄せられた。発信元は下1桁のみが異なる4種類の番号だった。

 町によると、業者は「オトクヤ」と名乗り「町役場から回収を依頼された」と虚偽の説明をし、古着などを買い取ると話した。業者は取材に、同町へ集中的に電話をかけて家に訪問したと認め「法律には触れていない」と主張した。

 警察庁によると、全国のアポ電件数は2022年に約12万件となり、調査開始以降、最多となった。全国の警察や自治体は住民向けのメールやホームページで注意を呼びかけ、被害防止に努めている。

 だが、押し買い業者が主に狙う高齢者は、パソコンやスマホが苦手な人も多い。嘉手納町産業環境課の山城久幸環境衛生係長(42)は「いざという時、お年寄りに注意が伝わらないのではないか」と懸念を抱いていた。

 山城さんはアポ電の相談が相次いだ当日「詐欺にご注意を!!」と大書したビラを600枚作成し、6カ所で開いていた介護予防の体操講座の参加者に配布。その後も、高齢者が集まるイベントなどで配るようにしてもらった。

 呼びかけは住民に届いている。日中は家に一人でいることが多く、アポ電を何度も受けたという当山トミさん(92)は「何回も注意してくれたおかげで、売るような物は全くないと言って電話を切れるようになった」と話す。

(共同通信)