有料

「沖縄そばの『兄弟』は個性豊か」 平川宗隆さん、世界の「麺ロード」を研究


「沖縄そばの『兄弟』は個性豊か」 平川宗隆さん、世界の「麺ロード」を研究 ブラジルの沖縄そば製麺所(平川宗隆さん提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 17日は「沖縄そばの日」。旅食人(がちまいたびんちゅ)を自称する元県職員の獣医師、平川宗隆さん(78)=那覇市=は、沖縄そばと同様、中国を源流とする世界各国の麺を食べ歩き、アジアの「麺ロード」を研究している。同じ麺料理だが具材やスープは千差万別。「沖縄そばの『兄弟』は個性豊かだ」と話す。

 沖縄と関係が深い中国・福建省の麺には、木を燃やした灰に水を加え、上澄みの液をかん水に使う特徴がある。沖縄そばの原点「木灰そば」だ。平川さんが現地を訪ねると、出てきたのは丸い麺。「八重山そばと似ていた」と振り返る。

 今の沖縄そばの形ができあがったのは明治後半だとみている。当時、中国の料理人が作る「支那そば」を売り出す新聞広告があったが、大正期になると「琉球そば」に表記が変わる。「中国の料理人が去った後、かつお節のだしに変えるなど、独自に発展したのでは」と考察する。

中国・雲南省の麺料理。唐辛子やサンショウで激辛(平川宗隆さん提供)

 中国の麺文化は、東南アジア諸国に広がった。中国は主に鶏のだしだが、牛骨や豚骨、魚介のだしなど伝わった先で独自の進化を遂げていく。

 ベトナムやラオスは小麦ではなく米粉が中心で、「だしは牛骨で味の繊細さが群を抜いている」。カンボジアも米の麺が中心だが、小麦を使ったミーと呼ばれる黄色い麺もあり「沖縄と似ていてほっとする」。ミャンマーは川魚を具材やだしに使い、「日本人の口には合わないかも」。

カンボジアの麺料理。沖縄そばに似た黄色い麺と米粉の麺がミックスされている(平川宗隆さん提供)
カンボジアの麺料理。沖縄そばに似た黄色い麺と米粉の麺がミックスされている(平川宗隆さん提供)
ラオスの牛肉麺。ゆで卵や香草、青菜がトッピングされている(平川宗隆さん提供)
ラオスの牛肉麺。ゆで卵や香草、青菜がトッピングされている(平川宗隆さん提供)

 沖縄そばは店がスープを作って味を決めるが、東南アジアは香辛料や具材で客が自由にアレンジできるのが醍醐味(だいごみ)だ。

 南米は沖縄からの移民によって沖縄そばが直接伝わった。いわば沖縄そばの「子孫」だ。

 ブラジルの沖縄そばはすでに非日系人にも定着した。カンポグランデ市には100店舗以上の沖縄そば屋があり、製麺所も稼働する。ネギや卵焼きなどの具材は沖縄そばと共通するが、牛肉が乗り、だしは牛骨。現地風にアレンジされている。

「旅食人」の平川宗隆さん

 世界各国で沖縄そばの「兄弟」や「子孫」と出合ってきた平川さん。よく「一番おいしいのはどこの麺?」と聞かれるが、いつも「沖縄そば」と答えている。「やっぱり小さい時から親しんでいるからだろうね」と笑った。

 (稲福政俊)