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演劇 個性的な劇場 多様な作品<2023年県内年末回顧>


演劇 個性的な劇場 多様な作品<2023年県内年末回顧> 県外で上演された「9人の迷える沖縄人」(提供)
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 2023年に私が関わった、もしくは演出した作品は6本、鑑賞した作品は18本ある。この中から印象に残った作品をいくつか挙げてみる。

 まずは10月に那覇文化芸術劇場なはーとで上演された「なはーとの出会いシリーズ(1)ジャンコクトー『声』」。異なる地域で活動するアーティスト同士や観客と演劇の戯曲との“出会い”の中で立ち上がる舞台作品を楽しんでもらう、なはーとの企画。今回は、京都の演出家和田ながらと「演劇ユニット多々ら」を主宰する地元の俳優新垣七奈の出会い。これまでどれだけ上演されてきたか分からないほどの名作である本作は、上演史上1番ポップな「声」と言われるほど斬新な演出だった。次回も期待大。同じくなはーとで9月上演の木ノ下歌舞伎「勧進帳」。いつかは見たいと思っていた木ノ下歌舞伎を那覇で見られる日が来るとは(笑)。うわさ通りとても刺激的で、木ノ下裕一のアフタートークもすごく良かった。

 県産品が県外で上演されるのもうれしい。「9人の迷える沖縄人~After’72~」(当山演出)は5月に京都ロームシアターで上演。「9人―」にも出演している芝居屋いぬかいの犬養憲子は一人芝居「はぐ」を大阪で、「楽屋から」を石川・岐阜で上演した。

 てんぶすホールの木曜芸能シリーズは今年から現代演劇が加わり、注目の作家兼島拓也の「Folklore」(当山演出)が7月に上演された。

 沖縄の演劇シーンは 2015年、福永武史が開設した「わが街の小劇場」(10月閉館)で大きく変わった。理由は、安価で利用できること。若手集団や実験的上演ができるようになり、多様な作品が生まれるきっかけとなった。特に劇団 O.Z.Eの企画「日付変更線」(約1カ月ロングラン上演)は、わが街の小劇場がなければ生まれなかった企画だ。2017年に「アトリエ銘苅ベース」、2021年に「壺屋演劇場かさね」、「ひめゆりピースホール」(リニューアル)がオープンした。

 個性ある民間劇場の取り組みも面白い。「アトリエ銘苅ベース」は提携カンパニー制度や、2階に宿泊しアーティストインレジデンスが可能、来年度から「火ようは銘苅で」も始まる。「ひめゆりピースホール」はエーシーオー沖縄の自前劇場で多くの作品を生み出し、「演劇場かさね」はスクールを併設、定期的にスクール生の舞台の上演やお笑いにも場を提供している。「なはーと」も企画上演で県外アーティストや作品の橋渡しを行い、芸術文化交流の役割を担う。

 来年はどんな作品が上演されるのか楽しみだ。皆さんも劇場に足を運んでいただき、応援をお願いします。

 (当山彰一 俳優、演出家、アトリエ銘苅ベース代表)