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みんなに愛された役者 平良進さんを悼む 八木政男(沖縄芝居役者)


みんなに愛された役者 平良進さんを悼む 八木政男(沖縄芝居役者) 解体前の首里劇場の観客席で当時を懐かしむ平良進さん(左)と八木政男さん(右)=2023年9月28日、那覇市首里大中町(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 琉球新報社

 平良進君は沖縄芝居の名優、翁長小次郎さんが立ち上げた劇団「翁長座」が役者のスタートだ。進君が翁長座にいた時だったか、琉球放送の紅白歌合戦で共演した。僕が司会で進君がゲスト。出会いはその頃だったと思う。翁長さんの教えを受け、芸風も幅広い役柄を演じる翁長小次郎風。芝居で共演する時、進君は二枚目役で僕は三枚目役だった。同じ沖縄芝居役者で妻の平良とみさんの協力も大きかったと思う。

 彼は努力家だった。宮古出身で宮古なまりもあったけれど、芝居で演じる時には宮古なまりは抜けていた。なかなかできないことだ。

 のんきなところもあった。役者はとちっても客に分からないようにするよう「まちがてぃ、いろみしてぃならん」と先輩方から言われていた。だが、進君は間違ったら間違ったと顔に出てしまう。演技中にせりふを忘れたら、後ろの人に聞き直す。でもかわいくて憎めない、先輩にも後輩にもみんなに好かれるタイプだ。優しい人だった。

 進君とは昨年9月に取り壊す前の首里劇場でお会いした。その後、別の取材で糸満市米須の公民館でお会いしたのが最後になった。亡くなったのか…。気持ちが整理できない。長年活躍した役者らしい役者が本当に少なくなってしまった。

(沖縄芝居役者)