那覇文化芸術劇場なはーとが実施した実態調査で、多くの文化芸術の担い手たちが口約束で働かされ、低収入やハラスメントに苦しんでいる実態が明らかになった。南城市のセクハラ疑惑も、業務委託という不安定な契約が影響している。昨年成立したフリーランス保護の新法が11月までに施行されるが、どのように変わろうとしているのか。制定を推進したフリーランス協会の平田麻莉代表理事に聞いた。
―フリーランスの契約トラブルが相次いでいる。新法ではどんな保護策ができるのか。
「契約トラブルを防ぐ上で最も大きいのは、口約束の禁止だ。発注側の組織に、仕事の内容や報酬額を書面やメールなどで明示するよう義務づける」
―これまでは規制がなかったのか。
「従来の下請法では資本金1千万円超の企業が対象で、それ以外はいわば無法地帯だった。新法では納品後60日以内の支払いや、中途解除をする場合の30日前予告なども義務化される」
―ハラスメントで泣き寝入りを強いられるフリーランスも多い。
「新法では、相談窓口の周知や、事実関係の確認、被害者・加害者への適正な措置が義務づけられる。業務委託契約を理由にきちんと被害申告を調査しなかった南城市の案件は違反となる」
―新法では、すべてのフリーランスが保護されるのか。
「習い事の先生やベビーシッターなど、個人から仕事を請け負っているフリーランスは対象外だ。発注者側の企業や自治体などの組織に規制をかけているためだ」
―新法をどのように生かせばいいか。
「これまでは契約条件を知りたい時や報酬の支払いを先延ばしされた時に、『お金に細かい人だな』と言われてかわされることがあったが、『法令違反で御社も困りますよ』と交渉で言える。無法状態を変え、フリーランスが自身を守る盾や印籠として新法を使っていくことが大事だ」
(聞き手・南彰)
HPでチェックリスト なはーと
県内のアートワーカーを取り巻く実態調査をまとめた那覇文化芸術劇場なはーとは、契約とハラスメントに関する注意点をまとめた「チェックリスト」をホームページで公表している。
実態調査を共同で行った「アーティストの条件企画チーム」(上原沙也加さん、寺田健人さん、福地リコさん)が中心になって作成した。
チェックリストでは、実態調査の結果を踏まえ、仕事を依頼する側が、その内容や時期、報酬額、支払い方法、中止・延期になった場合の保証などをあらかじめ示し、受ける側も確認することを推奨している。ハラスメントにあたる言動についても、パワハラ、セクハラ、アカハラ、マタハラ、2次加害などに分けて、具体例を列記している。詳細はhttps://www.nahart.jp/archive/nahart_conference/から。
(南彰)