明石書店刊「日本社会とポジショナリティ」刊行記念トークイベントが20日、那覇市のジュンク堂書店那覇店で開かれた。執筆者の桃原一彦(沖縄国際大教授)、玉城福子(名桜大准教授)、知念ウシ(むぬかちゃー)の三氏が登壇し、「ポジショナリティ」の有効性や活用法などについて論議した。
「ポジショナリティ」とは、集団に起因する不平等や差別が、個人の間で現れる諸相を捉える視点。広く知られていない概念であるため、桃原さんは大規模開発事業にともなう公害問題などで用いられる「受益圏と受苦圏」という言葉に近いとした。「基地問題やジェンダー、多文化社会、構造的差別など、差別している側は気づきにくい。それを知らしめるのがポジショナリティ」と語った。
知念さんは「セクハラやパワハラ、DVなど、いやな感じだけど言葉が見つからないから最初は皆、黙っていた。しかし、勇気を持って言い続けた人のおかげで『これはセクハラです』など言いやすくなった」とし、同じように「ポジショナリティ的にどうですか、のように使えば議論の端緒になるのではないか。ポジショナリティという難しそうな横文字を使わなくても『モヤモヤする』でいいんじゃない。言いやすくなれば流れになり、問題意識が広がっていく」と提案した。
モヤモヤした例として「南京・沖縄をむすぶ会」の訪問団が南京侵攻の犠牲者を追悼して黙とうし、団長が「沖縄も加害に加担した歴史を覚え、民間交流の道を刻んでいきたい」と呼びかけた記事(10月20日、琉球新報)を例に挙げ、「沖縄の人ではないと思われる日本人の団長が、沖縄を代弁しているのは違和感がある」と語った。玉城さんは「ポジショナリティという視点は、日常生活の中で権力関係を確認し、考えることができる。優位な立場にあると気づきにくいので、アンテナを立てて生活していこう」と語った。
(宜保靖)