prime

【深掘り】県外から人員呼び寄せ、午前と午後で別の学校を送迎… バス運転手不足が深刻化、修学旅行の受け入れ維持に四苦八苦


【深掘り】県外から人員呼び寄せ、午前と午後で別の学校を送迎… バス運転手不足が深刻化、修学旅行の受け入れ維持に四苦八苦 大型バスの車内(イメージ写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 沖縄のリーディング産業の観光を長年支えてきた修学旅行の受け入れ体制が危機的状況に陥っている。貸し切りバスの運転手不足が深刻化していることを受け、県が初めて人材確保のための予算を計上した。県外から人員を11月までに確保できれば、2週間程度の研修を経て12月のピーク時もバスを稼働できるという。バス会社関係者からは「人材確保は急務だ。沖縄の観光需要を維持しなければ」との声が上がっている。

【関連】修学旅行のバス、運転手不足で1200台手配できず…沖縄県が予算計上


 修学旅行客が多く訪れる秋期のバス不足は年々深刻化。2022年は「1千台足りない」と言われていた。20~22年は新型コロナウイルスの影響でキャンセルが相次いだため、結果的に「沖縄に来てもバスがないという最悪の事態は免れた」(バス会社関係者)。だが、今年は行動制限が解除されているためキャンセルが相次ぐ可能性は低く、運転手を確保できなければ予約を断らざるを得ない状況だ。


 県の補助は、10月1日~12月31日の修学旅行を受け入れる貸し切りバス事業者が対象。運転手とガイドの計100人分の人材確保のために計上した4千万円が県議会で承認されることが補助の前提となる。
 バス会社などによると、繁忙期の10~12月に県外から運転手やガイドを採用する場合、バス事業社は旅費と滞在費、研修費用などで1人当たり50万円程度の支出になるという。
 県はそのうち8割に当たる40万円を上限に、緊急支援対策費用として支給する方針だ。
 県観光振興課の担当者は事業者が負担する該当費用が50万円を超えた分について「交通費や滞在費を補助する観光事業者受入体制再構築支援事業など併用し、負担額を減らすことも可能だ」と話した。


 コロナ禍前、沖縄を訪れる修学旅行生は年間44万人を超える水準だった。だが、コロナ下では移動手段が飛行機のみで変更が難しい沖縄が敬遠され、修学旅行生が激減した。
 行動制限が解除された23年度。コロナ禍前の8割程度の32万人の来島が予想される中、バス運転手の人手不足で10~12月の繁忙期のバスの手配が見通せない深刻な事態が改めて浮き彫りになった。7月時点では累計2300台が未手配の状況だった。
 事態を重く見たバス会社は、午前中に生徒を空港に送り届け、午後に違う学校の生徒を迎えて移動する計画にしたり、那覇市内で自由行動にする日を作ったりして車両の運行日程を調整。現時点で未手配車両を1200台程度まで減少させた。


 JTB沖縄では、バスの確保ができないことなどから、秋口は一般団体の予約を断ることもあるという。桂原耕一社長は「修学旅行はリピーターにつながる大事なマーケットにもかかわらず、コロナ禍を経て沖縄のシェアが落ちている」と指摘する。修学旅行の渡航先は一度変更すると最低でも3年は継続する傾向があることから「数年先を見据えて『沖縄需要』を維持しなくてはならない」と訴えた。
 琉球バスでは修学旅行シーズンに向け、北海道から8人の運転手と15人のガイドを呼び寄せる予定だ。
 県の補助計画について、県と県バス協会は6日にバス事業者に向けた説明会を開いた。同協会の高江洲誠事務局長は「補助があることで多くの会社が人材を確保しやすくなる。車両に余裕のある会社はできるだけたくさんの人を誘致してほしい」と話した。

(與那覇智早)