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【寄稿】所得格差と労働生産性 観光産業、高付加価値化を 成長分野への移動も重要 金城毅(りゅうぎん総研客員研究員)下


【寄稿】所得格差と労働生産性 観光産業、高付加価値化を 成長分野への移動も重要 金城毅(りゅうぎん総研客員研究員)下 イメージ
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 産業別の労働生産性を全都道府県別でみると、本県は建設業が全国8位と上位で、次いで運輸・郵便業が16位、専門・科学技術・業務支援サービス業が17位、鉱業が19位などとなっている。しかし、大方の産業は下位に位置している。

 主要産業の宿泊・飲食サービス業は46位と下から2番目である。一定規模のホテルなどの生産性は全国でも上位だが、零細な飲食店が多く含まれていることが要因とみられる。情報通信業も39位で、下請的な業務が多いことが影響しているとみられる。

 製造業の比率が高いほど、1人当たり県民所得も大きいことが指摘され、両者には正の相関がみられる。本県の製造業の割合は4.4%(2018年度)で、全国の21・1%よりかなり低い。食品関連と建設関連の割合が高く、電気機械や輸送用機械など付加価値の高い製造業が極めて少ない。

 島しょ県である本県は、市場の狭隘(きょうあい)性や物流コスト、水・エネルギーの安定供給など製造業の立地条件で不利な点が多い。全国との所得格差を縮めるため労働生産性の向上が課題で、そのためにまず産業別就業者の構成比の高い産業で生産性の向上に取り組むことが必要だ。

 本県の主要産業である宿泊・飲食サービス業では県内総生産に占める構成比が就業者の構成比を下回っている。市場規模(売上高)が比較的大きな観光関連産業では、売上高に占める付加価値率を高めるための取り組みが必要となる。

 情報通信業や製造業、農林水産業などでは限られた県内市場だけでなく、県外への販路拡大にも取り組むために、行政支援とともに県内外の研究機関との連携、AI(人工知能)の活用などを強化する必要がある。今後はAI技術の進展に伴い、成長性がより高い分野への労働人口の移動も重要になる。

 なお、1人当たり県民所得の指標は、分母の総人口で本県はピークを越えたばかりだが、他の道府県では既に減少している。一方、分子の県民所得は人口減少ほどには減らず、生産性向上で増加するケースもある。このため1人当たり県民所得の数値が、最下位から浮上するのは今後も難しい。1人当たり県民所得は人口構造の要因もあり、県民所得の内訳別に、それを稼得している人口1人当たりの所得でみるなど、多面的な分析も必要である。