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バスケW杯、経済効果の「真水」は? 沖縄のスポーツツーリーズムの可能性とは 大阪体育大学学長・原田宗彦氏に聞く<焦点インタビュー> 


バスケW杯、経済効果の「真水」は? 沖縄のスポーツツーリーズムの可能性とは 大阪体育大学学長・原田宗彦氏に聞く<焦点インタビュー>  原田宗彦氏
この記事を書いた人 Avatar photo 松堂 秀樹

 沖縄県は2023年8月25日~9月3日に開催された「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の県内での経済波及効果(速報値)が107億2千万円だったことを発表した。「スポーツと都市づくり」を長年研究し、日本スポーツツーリズム推進機構の会長を務める大阪体育大学の原田宗彦学長に今回の経済波及効果の評価や、沖縄のスポーツツーリズムの可能性などについて聞いた。

 ―107億円の経済波及効果の評価は。
 「算出方法がどうだったのか、『真水』として沖縄にどれだけ入ってきたかをきちんと見極める必要がある。補助金などを差し引き、外資系の企業ではなく、沖縄の旅行代理店などを利用した人がどれくらいいて、県内の宿泊施設や飲食店などでどの程度お金を使ったのか。そこが重要だ」
 「今回は日本代表チームが勝ち進んだことで急きょ沖縄に向かったファンも多いはずだ。そのため当初より経済波及効果も大きくなったのではないか」

 ―沖縄アリーナが会場だった。
 「沖縄アリーナは米国の大学バスケットボールの会場ほどの規模なのでそれほど大きな施設ではないが、『琉球ゴールデンキングス』という、非常に優良な中核テナントが入っている。沖縄アリーナを参考にして、全国では体育館ではなく、アリーナ施設を造ってまちづくりを進めようという動きが出ている。沖縄アリーナがスポーツツーリズムの可能性を広げる大きな起爆剤になっている」

―沖縄でのスポーツツーリズムの可能性は。
 「米国では港湾地域に球場を造って、駐車場と球場の間にさまざまな商業施設を設置するなどスポーツイベントを核にしたまちづくりが進んでいる。日本ではこうした計画はほとんどないが、沖縄は国際大会などを機に宿泊施設や商業施設の整備など新たなまちづくりの可能性も期待できる」
 「沖縄の可能性を最大限に生かすには、50年後、100年後を見据えたまちづくりが必要になる。大会場と宿泊施設、商業地などとの往来の利便性を高めるためには、鉄軌道や電車など公共交通のインフラ整備の拡充は欠かせない」

―空手の発祥の地として注目されている。
 「海外の空手愛好家は『聖地』への憧れがある。個人でも団体でも空手を体験しに沖縄を訪れている。国際大会だけでなく、経験者、初心者を問わずに普段から町の道場で空手体験などができる仕組みがあれば、さらに沖縄に多くの人を引き寄せるだろう」 (聞き手・松堂秀樹)