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国内先進地、行政主導でてこ入れ 元プロが見る沖縄の可能性は <サイクルの島へ 台湾の事例から>4


国内先進地、行政主導でてこ入れ 元プロが見る沖縄の可能性は <サイクルの島へ 台湾の事例から>4 沖縄本島一周ツアーを案内する元プロロードレーサーの内間康平さん=2023年12月(ジャイアント・ジャパン提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

 2016年のリオデジャネイロ五輪で自転車ロードレースに出場した県出身の内間康平さん(35)は昨年4月、四国からの一行と共に台湾を自転車で一周する機会があった。参加していたのは、台湾との自転車交流に力を入れてきた愛媛県職員やプロでつくる「四国一周PR隊」だ。

 国内でサイクルツーリズムに取り組む地域では、行政や首長が先導役となり施策に取り組む事例が目立つ。先進地の愛媛県では、中村時広知事が広島県とを結ぶ「しまなみ海道」のサイクリングロード活用や、台湾との自転車交流にリーダーシップを発揮する。

 四国四県などでつくる「サイクリングアイランド四国推進協議会」は17年11月から、四国一周(約千キロ)の自転車旅の普及活動を始めた。愛媛県が中心となり、「四国一周」と「台湾一周」を達成したサイクリストにオリジナルのジャージを贈るなど、互いを行き来する自転車旅の促進にも力を入れる。その一環として台湾を訪れたPR隊と自転車で走った内間さんは「ものすごい熱を感じた」と言う。

 元プロの内間さんは現在、サイクリングガイドとして県内外で自転車の面白さや楽しみ方を発信している。昨年からは、台湾の自転車メーカー「ジャイアント」のアンバサダーを務め、沖縄一周のツアーの案内役も担う。

 自転車産業振興協会の21年の調査では、沖縄県の1世帯当たりの自転車保有台数は0・491台で、全国で46番目と普及率が低い。全国各地の走行環境を知る内間さんは「県内はサイクリングにも適さないと捉えられがちだが、特にスポーツ自転車が走る光景を見る機会は多く、自転車が車道を走っていいという認識も他県より広がっている」と話す。

 気候が温暖な沖縄には他のプロスポーツと同様、自転車競技チームも冬場に合宿で訪れる。滞在先となるのは主に本島北部だ。毎冬の沖縄合宿が定着しているシマノレーシング(大阪府)の野寺秀徳監督は「北部は信号が少なく、左手に海を見て走ると海側から車はほとんど入ってこなくて走りやすい。青い海と空は気が晴れるし、地元の人にも理解がある」と指摘する。

 県は24年度、サイクルツーリズムの推進に向けた協議会を新たに設置する。設置に向けた意見交換会に加わる内間さんは「沖縄に全国有数のサイクリング環境は整っている。行政含めてしっかり進めたい」と強調した。

(當山幸都)
(おわり)