prime

年間数万人が「環島」 旅行社、安全・快適お膳立て 沖縄側のサポート体制課題<サイクルの島へ 台湾の事例から>2


年間数万人が「環島」 旅行社、安全・快適お膳立て 沖縄側のサポート体制課題<サイクルの島へ 台湾の事例から>2 サポートカーが同行する環島ツアーの様子=3月(県サイクルツーリズム推進協会提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

 台湾の人ならやっておくべき三つのこと―。台湾内外でのサイクリングツアーを扱う旅行会社「ジャイアント・アドベンチャー」(台中市)を訪ねた際、蔡嘉津副社長はまずこんな話を切り出した。

 「三つ」とは、台湾最高峰の玉山(標高3952メートル)を登ること、最大の淡水湖・日月潭(たん)を泳いで渡ること、そして自転車で島を一周する「環島(ホワンダオ)」だ。「自転車一周は台湾の人の心の中に、一種の文化として刻まれている」(蔡副社長)

 同社は台湾の世界的自転車メーカー「ジャイアント」の子会社で、2009年に設立された。台湾を9日間で一周する環島ツアー(910キロ)には23年、103団体の参加があり、約5千人が自転車で台湾を一周した。ツアーなどに頼らず環島に挑戦する人も含めれば、一周するサイクリストは年間数万人いるとみられている。

 一周以外にも3~5日で各地を巡る商品を手掛け、昨年は6千人を受け入れた。同社のツアー参加者の35%程度は海外からで、香港やマレーシア、シンガポールが多く、次いで欧米、日本となっている。

ツアーにはサポート車両が同行するため、参加者は旅行荷物を預けて身軽に走れる。パンクなどのトラブルに対応し、スタッフが撮影した動画や写真の提供も受けられるなど、安全で快適な自転車旅をお膳立てする。

 海外から多くが訪れる要因として、台湾政府の支援も大きいという。例えば交通部観光署が関わり東部・花蓮県で開催されている「台湾KOMチャレンジ」は、海抜ゼロメートル地点から標高3275メートルまでの105キロを一気に駆け上がるヒルクライムレースだが、PRもあり欧州で注目されるなど、サイクリストの誘客に貢献している。

 台湾から日本向けのツアーで商品化されているのは、北海道や愛媛県(しまなみ海道)、滋賀県(琵琶湖)など。サイクルツーリズムに力を入れ、台湾へのプロモーションにも取り組む地域が目立つ。

 ジャイアント・アドベンチャーを率いる鄭秋菊社長は、かつて自転車で沖縄を一周した経験を持つ。ただ、沖縄向けの商品展開は現在ない。
「台湾では『ツール・ド・おきなわ』以外、沖縄でのサイクリングに対する理解は少ない」。鄭氏は現状について説明した上で、沖縄でのサイクンリングツアーの可能性について「こちらの体制は整っているが、沖縄のサポートや、安全安心なサービスが提供できるかが重要だ」と課題を挙げた。

(當山幸都)

もっと詳しく

台湾をぐるりと一周「環島」を自転車で 世界的メーカー創業者も成功、ブームのきっかけに <サイクルの島へ 台湾の事例から>1

 1989年から続く「ツール・ド・おきなわ」をはじめ、県内でサイクルスポーツの普及に力を入れてきた第一人者、森兵次県サイクリング協会会長(82)は2018年と1 …