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沖縄に新たな航空産業 国内初、エアバス機体の改修事業 物流拡大を商機に MRO JAPAN


沖縄に新たな航空産業 国内初、エアバス機体の改修事業 物流拡大を商機に MRO JAPAN 改修事業について基本合意書を締結したMRO Japanの高橋隆司社長(右から2人目)、EFWのジョディー・ボトCEO(同3人目)=22日、那覇市のMRO Japan
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 MRO Japan(MJP、那覇市、高橋隆司社長)が22日、ドイツのエルベ・フルクツォイヴェルケ(EFW)との間で、旅客機から貨物機への改修事業(P2F)の基本合意を結んだ。これまでの航空機整備の領域を超え、MJPは新たな事業分野を切り拓く。

 エアバス機のP2Fを請け負うのは世界でも今回を含めて5社で国内では初。日本の航空産業の広がりが期待される。 

 P2Fでは、客室内の装備品を全て取り払い、貨物用の扉を加えるほか、胴体や床の補強も行う。MJPがメーンに行う航空機重整備と比較し、作業期間は約4倍、人員も3~4倍必要となるなど、大がかりな事業となる。P2Fを行うことで新たに60人ほどの雇用が生まれるという。

 EFWによると、日本の貨物輸送や物流市場規模は毎年平均4・2%拡大し、2029年までに約20%増える見込み。それに伴い貨物機の需要も高まると見ており、国内の先行事例として、ヤマトホールディングスがシンガポールで同じくEFWの委託でP2Fを施したエアバス機を導入したことを挙げた。

 ヤマトは導入したエアバス貨物機を使って県産品の流通拡大や、将来的にアジアからの貨物を那覇経由で本土へ運ぶ展開も見据えている。

 航空機輸送では、大型トラック数台分が一度に運べるためより効率的で、多くの貨物を短時間で何度も運べる。改修された機体が国内でも利用されれば、特に本土で長距離トラック運転手の不足が懸念される「2024年問題」を商機に変えることにもなる。

 MJPによると、古くなった旅客機は貨物機として改修し、旅客を乗せる機体は新しくきれいなものを充てるサイクルがある。貨物の航空輸送需要が広がる中で、P2Fの供給が追いつかず、改修の順番待ち状態が続いているという。MJPの参入はアジア圏での供給量増加につながるとして、期待が高まる。

 MJPは、リース返却整備やP2Fなどの事業拡大と並行して、毎年約30人の新入社員を迎え入れるなど、雇用拡大にも力を入れる。社員444人中255人が県出身者で、県内雇用の促進にも努めるが、現在所有する格納庫での同時機体受け入れ可能数は4機にとどまる。「容量」の面で成長が「頭打ち」を迎える局面も将来的には考えられ、事業拡大を実現し続ける体制づくりも今後は検討課題となりそうだ。

 (與那覇智早)