【伊江】食用の青ノリの中でも食味と香りが良く高級品種として知られるスジアオノリを、種苗育成から出荷まで一貫して手掛ける陸上養殖場施設が伊江村に完成した。スジアオノリの養殖は県内初。同施設で落成式が23日、開かれた。養殖事業を担う伊江漁業協同組合は初年度5トンの出荷を目指し、今後は年間10トンの生産、出荷で8千万円の売り上げを目標としている。高級品種の産地化を進める第一歩として、期待が掛かる。
養殖場の敷地面積は約1871平方メートル。伊江島の地下海水を使用し、屋内施設で3週間かけて種苗を育てた後、屋外に設置された170基の水槽で栽培する。種苗生産から約2カ月で収穫できるという。収穫後は、屋内施設で洗浄と脱水、乾燥などの工程を経て業者へ出荷する。「琉球あおのり」として発売される予定だ。
スジアオノリは主に徳島県の吉野川や高知県の四万十川などの汽水域で生産される。しかし温暖化による水温上昇が生育不良を招き、近年は生産が厳しい状況で、四万十川では直近4年間、収穫ができていないという。
伊江漁協の八前隆一組合長は「全国的に不足しているスジアオノリを県内でも育てることができないか」と着目し、2018年から整備に取りかかった。
事業には海藻の養殖を研究する高知大総合研究センター海洋生物研究教育施設の平岡雅規教授と阿波市場の上野伸介代表が協力。平岡教授は「伊江島の地下海水は水質も良く、水温が23度と一定で生育には適している」と
可能性の高さに期待する。
さらに温暖化で全国的に生産量が減少している状況に「沖縄の温暖な気候下で生産の栽培方法が確立できれば、全国でもその技術は適用できる」と意義を強調した。
施設は総事業費約8億2304万円で6年かけて伊江村が整備した。式典で名城政英村長は「北部地域の水産業の発展に寄与していきたい」とあいさつ。八前組合長は「漁業従事者の雇用創出や収入増加につなげたい」と意気込んだ。
(玉寄光太)