沖縄国税事務所が1日発表した県内路線価(2024年1月1日現在)の対前年変動率の平均値は5・6%で全国2位の伸び率となった。観光需要と低金利を背景とした住宅需要を要因に不動産投資の活発化がうかがえる。
全国1位は福岡県の5・8%。23年度の入域観光客数は853万2200人で、コロナ禍以前で過去最高だった18年度の85・3%まで回復した。識者は「いずれ入域観光客数は1千万人まで回復するだろう」と予想し、地価の上昇基調も続くとの見方を示した。
那覇市久茂地3丁目国際通りは前年比3・4%プラスの150万円。那覇税務署管内で同地点が最高路線価地点となった02年以降、最も高い値。コロナで苦戦を強いられた一帯だが、回復した観光需要を取り込もうと、空き店舗などを中心に投資需要が増している。
最も上げ幅が大きかったのは「宮古島市平良字西里の西里大通り」の前年比12・5%プラスで、1平方メートル当たり13万5千円。同市ではホテルやアパートなどの建設需要が高く、土地の価格にも大きく反映された。最も上げ幅が大きかったのは「宮古島市平良字西里の西里大通り」の前年比12・5%プラスで、1平方メートル当たり13万5千円。同市ではホテルやアパートなどの建設需要が高く、土地の価格にも大きく反映された。
県内6税務署の各管内の最高路線価は、全ての地点で23年と比べて上昇した。
全国では沖縄に続いて東京都(5・3%)、北海道(5・2%)、宮城県(5・1%)などの上げ幅が大きかった。
県内トップの伸び率の宮古島市平良西里西里大通りは旺盛な観光需要を基に地価が急伸。リゾートホテル開発など県外からの大型投資案件が相次ぎ、観光客向け飲食店などの店舗需要が高止まりしている。「テナントビルは建てれば(店舗で)埋まる」(不動産関係者)状況にあるという。
国土鑑定センター社長の仲本徹不動産鑑定士が県全体の特徴として「観光の回復」と共に挙げるのが「住宅需要」だ。総務省の住宅・土地統計調査(18年)で県内の持ち家の割合は44・4%と全国ワースト。そこに商機を見いだした県外住宅メーカーなどが本島中南部を中心に土地を購入し、建売住宅を販売する動きがここ数年広がっているという。
木造住宅もシェアを伸ばしている。県外メーカーの建売とも共通するのは同一規格で売り出すことで高騰する建築資材でもスケールメリットの恩恵を受けることができる点。低金利で住宅ローンを融資する銀行の姿勢も相まって、県内の住宅需要を底支えしてきた。
仲本鑑定士は先行きについて「観光需要と金利動向」をポイントに挙げる。県内住宅需要を支えてきた低金利は日銀の追加利上げを念頭に、上昇局面にある。観光需要については「18年のピーク時はホテルが足りない状況もあった。このまま回復していけば商業圏の投資需要はまだ伸びしろがある」とする一方、住宅需要については「金利がどう上がっていくかが焦点。状況によっては押し下げ要因となる可能性もある」との見方を示した。
(当間詩朗)
<用語>路線価 毎年1月1日時点の主要道路に面した土地1平方メートル当たりの評価額。国税庁が毎年7月に発表し、相続税や贈与税の算定基準となる。国土交通省が発表する公示地価や不動産鑑定士など専門家による鑑定評価額などを基に算定する。公表後に景気変動などで地価が急落し、納税者に過剰な負担が生じることを防ぐため、公示地価の8割程度の水準としている。