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「市民に足を運んでもらってこそマチグヮー」 商店街、地元客呼び戻しへ続く模索<小売烈戦ー激変の沖縄市場>10


「市民に足を運んでもらってこそマチグヮー」 商店街、地元客呼び戻しへ続く模索<小売烈戦ー激変の沖縄市場>10 第一牧志公設市場にはまちづくりの参考にしようと国内外から視察に訪れる人も多い=4日、那覇市松尾
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

  8月中旬、那覇市松尾の第一牧志公設市場を歩くと、旧盆を前にお供え物や食材を買い求める地元客でにぎわっていた。2023年3月のリニューアルオープンから約1年半。外国人客の姿も目立つ。

 県内では小売り大手を中心に、この10年で店舗の大型化が顕著に進んだ。日本ショッピングセンター(SC)協会によると、1500平方メートル以上の店舗面積や小売り10店舗以上のテナントを持つSCは13年末時点で県内に33カ所(店舗面積計45万3812平方メートル)あったが、23年末には46カ所に増加。店舗面積は72万6188平方メートルと6割増えた。

 15年開業のイオンモール沖縄ライカム(8万6千平方メートル)や、19年開業のサンエー浦添西海岸パルコシティ(6万平方メートル)など県内最大級の店舗建設が相次いだ。

 店舗の大型化で長年、岐路に立たされてきたのが商店街だ。激変する商業環境への対応は古くて新しい課題であり続ける。

 那覇市がまとめた中心市街地の活性化に関する基本計画では「地元市民の中心商店街離れ」が課題に挙がる。郊外での大型店舗の立地や各地へのスーパーの相次ぐ出店で、「那覇に買い物に行くのが当たり前」という時代ではなくなっていることが背景にある。

 公設市場の粟國智光組合長は「外国人や観光客に来ていただけるのはありがたいことだが、市民や県民に足を運んでもらってこそのマチグヮーだ」と話す。

 那覇市が国際通り周辺で実施する通行量調査によると、22年度、23年度と上昇し、新型コロナウイルス禍前の水準に戻りつつある。23年度調査で平日の通行量が最も多かったのは「パレットイベント広場前」(1万1203人)で、「新第一牧志公設市場(北東方向)」(1万959人)が2番目だった。市なはまち振興課によると、公設市場周辺は観光客や団体グループの買い物、散策利用も多いが地元客の戻りも確認できるという。

 公設市場建て替えに伴い撤去された、市場中央通りのアーケードも完成が間近だ。もともとは1970~80年代、大型店の進出に危機感を強めた事業者らが商店街の利便性向上のため設置した経緯がある。公設市場の3階部分には調理体験などが楽しめる多目的室が新設され、イベントなどでの利用を見込む。

 商店街に地元客を呼び込む環境整備を支援する同課の担当者は「新たな公設市場ができたことが分岐点になっていくのではないか」と見通す。大手小売りの競争が激しさを増す中で、商店街の模索は続いている。 

(當山幸都)