コロナ禍が収束し、沖縄観光でも戻りつつあるインバウンド(訪日客)需要。中でもヨーロッパからの客や富裕層は環境保護への意識が高いとされ、受け入れ側も持続可能(サステナブル)な観光産業への意識が求められつつある。県内でも環境負荷に配慮する動きがじわりと出てきた。
りゅうせき(浦添市、根路銘剛宏社長)は昨年夏、グループ内ホテルのアメニティー用として再生利用可能な植物由来の紙をボトル素材に使った水「サステナブルウォーター」を導入した。事業開発部の津嘉山未海氏によると、25年3月までの試験運用で、高価格帯ホテル「ロコアナハ」の客室などに置き、宿泊客の反応などを見ている。
容器はスウェーデンの「テトラパック」社製で、オリジナルロゴ入りパック3種をスペインで製造し、輸入している。仮に県内で月3万本程度の需要があれば、沖縄で容器を回収、リサイクルできる「地産地消」ができるといい、市場ニーズを見極める。
現状の仕入れ価格はペットボトルと比べると2倍程度するが、沖縄で製造サイクルを回すことができれば、価格差もある程度圧縮できると見込んでいる。
りゅうせき経営管理部の廣瀬哲郎次長は「モノだけでなく、価値にお金を払う富裕層向けのホテルも増えた。社会的な付加価値をどう生み出すかも大きな流れだ」と話した。
那覇市の「ホテルパームロイヤルNANA国際通り」は22年、ホテル内の電力をうるま市のバイオマス発電を使った100%再生可能エネルギーに切り替えた。年間の電気消費量や部屋数から単純計算し、1泊当たりで18キログラムのCO2削減をしたと記載した「証明書」を希望する宿泊客に贈呈している。使い捨てスリッパも廃止した。
こうした取り組みは宿泊客の2 ~3割を占める外国人客から特に好評だという。高倉直久総支配人は「ヨーロッパの人は、環境に配慮していればより高いお金を払っても良いと考える人が多いという統計もある。ハワイの空港では、電気自動車は駐車場無料といった優遇施策もある。観光業はごみやCO2を出す産業でもあるので、できる限り国際基準で環境に配慮している」と説明した。
沖縄ツーリストの子会社OTS交通と、今年6月に資本業務提携したエムケイホールディングス(MKHD、京都市)。「MKタクシー」の経営で知られるが、沖縄では今後、富裕層を対象としたハイヤー事業などでOTS交通と連携していく計画だ。
事業開始のタイミングは「検討中」としているが、将来的には排ガスを出さないゼロエミッション車(ZEV)を沖縄で定着させる考えだ。
本拠地の京都では、24年3月末現在で182台、車両数の22%をZEV化した。30年までに全車EV化を目指している。
MKHD経営企画部の担当者は「イニシャルコストは大きいが、長い目で見ると燃料費削減になり、規模のメリットを生かせばトータルコストは抑えられる」とZEV導入のメリットを説明。「ヨーロッパの方は脱炭素の考え方が先進的なので、率先して取り組んで先行性のイメージが定着すれば、インバウンドからの利用も増えると期待している」と話した。
(島袋良太)