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薬局から医療福祉、ホテルまで多角展開 すこやかHD「生涯にわたるサポートを」<Who強者How強者 沖縄企業力を探る>12


薬局から医療福祉、ホテルまで多角展開 すこやかHD「生涯にわたるサポートを」<Who強者How強者 沖縄企業力を探る>12 新規開店した登川北店を紹介するスタッフと宮里社長 =3日、沖縄市登川
この記事を書いた人 Avatar photo 当間 詩朗

 「生涯にわたるサポートを愛を込めて提供する」。すこやかホールディングス(沖縄市、宮里敏行社長)は保険薬局事業を主力としながらも、事業の多角化に取り組んでいる。コロナ禍では患者の診療控えなどもあり、処方箋受付件数が減少するなど、収益に一定の影響もあった。2008年1月にホールディングス化したことによるグループの利点を生かし、薬局事業以外の事業の柱を増やしていくことで、経営の安定と、さらなる成長を目指している。

 同社は現在、薬正堂の保険薬局事業のほか、介護福祉、保育、サロン、IT、ホテル経営の計6事業をグループで展開している。その経営の礎となっているのが、ホールディングス化だ。 きっかけはいくつかの経営環境の変化にあった。

 県内には薬学部がない上に、06年に薬剤師の履修課程が4年から6年に延長され、新卒採用が2年間なくなる事情から、薬剤師の人材確保や人手不足は業界全体の課題となっていた。

 当時、19店舗まで保険薬局を増やしていたものの、国の診療報酬改定などもあり、経営基盤の安定化に向けた変革が求められたことから、調剤薬局運営の薬正堂とIT事業のジーエヌエーを傘下に抱える持ち株会社としてすこやかホールディングスの設立に踏み切った。

 主力の保険薬局事業では医療費を抑えるため、国が使用を促進している後発(ジェネリック)医薬品の販売事業にも進出。国内大手の東和薬品との提携で、08年2月には子会社として東和薬品沖縄販売も設立した。
 当時、県内には約400店舗の保険薬局があったが、経営難などから事業譲渡の相談も寄せられていた。新規出店に代わる選択肢として、既存薬局の事業譲受にも取り組んでいった。

 この年はさらに在宅医療の分野へも参入した。薬局に行くのが難しい利用者を対象に自宅や施設を薬剤師が訪問し、薬の管理や服薬指導などを行うサービスを展開。医師と薬剤師、管理栄養士らが連携を図ることで、新たなニーズの掘り起こしを図った。高齢者や医療的ケア児を中心に、直近では年間4319件の利用実績がある。 医療から福祉へ―。14年に北谷町伊平に介護付き高齢者住宅「すこやかの森ヴィラ北谷」を開設した。併設してリラクゼーションマッサージを中心としたサロン「ヒーリングフォレストシュロ」も開業。宮里社長は「今までの高齢者施設は郊外にあるものが多く、立地にこだわった。ある程度都市部にあることで入所者の家族も訪問しやすく、利便性向上につながっている」と振り返る。

 18年には沖縄市安慶田の旧中部徳洲会病院跡に認可保育園「すこやか未来保育園」を開園。待機児童問題を抱える沖縄市や医療機関と連携し、同施設内には医療法人徳洲会が運営する小児科、内科のクリニックも併設された。医療機関が併設されていることで、重度アレルギーの子や疾患を持つ子へも救急対応の体制が構築され、保護者の安心につながっている。

 23年には収益の一部を公園整備や管理に還元するパークPFI(公募設置管理制度)を県内初活用する形で、沖縄市にレフ沖縄アリーナbyベッセルホテルズを開業するなどホテル事業に参入し、他分野への挑戦も始めた。

パークPFI制度を活用し、開業したレフ沖縄アリーナbyベッセルホテルズ(すこやかHD提供)

 一方、主力の保険薬局事業でデジタル化の波が押し寄せる。アマゾン・ジャパンが始めたアプリによる処方箋の取り扱いなどが一例だ。「すこやか薬局」もアプリを活用した調剤予約などのサービスを展開しているが、今後もさらなるサービス開発を進めていく考え。

 宮里社長は「電子処方箋など医療界にもデジタル化の時代がきている。ただ、患者と対面する薬局の役割も重要だ。将来の薬局のあり方をこれからも模索し続けていきたい」と前を見据えた。 (当間詩朗)
 (毎週金曜掲載)