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共通テスト「前泊で負担が大」に 受験会場の新設求める声 県庁所在地のみの県も


共通テスト「前泊で負担が大」に 受験会場の新設求める声 県庁所在地のみの県も イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 2024年1月の大学入学共通テストは約49万人が出願した。全国に668会場が設置されるが、愛媛、佐賀、熊本の3県は受験地が県庁所在地のみ。前泊を迫られる受験生も多く、改善を求める声が上がる。負担軽減のため、会場新設に乗り出した地域もある。

 「慣れない場所に2泊するのは、肉体的にも精神的にも生徒の負担が大きい」。熊本県立人吉高で進路指導を担当する万膳宏章教諭(36)が打ち明けた。同高がある人吉市は宮崎、鹿児島両県に接する熊本県南部に位置するが、県内の試験会場は60キロ以上離れた熊本市の大学5カ所だけだ。

 人吉高は3年生の約8割に当たる約200人が受験。例年、貸し切りバスで約2時間かけ熊本市に前日入りする。引率教員は弁当も準備。万膳教諭は「1カ所でも熊本市以外に会場があれば」とこぼす。

 東西150キロに広がる愛媛県も会場は松山市の3カ所に限られる。西部の八幡浜市出身の女子大学生(22)は、交通費と宿泊費で3万5千円ほどの出費を強いられた。「会場周辺のホテルは高価で予約できず、入試日は徒歩40分かけて会場に向かった」と振り返る。

 大学入試センターによると、会場は都道府県ごとに大学や短大で構成する連絡会議が決め、センターは関与しない。

 秋田県立大や岐阜大が離れた高校で、新潟大や長崎大などは離島の高校で実施するが、全国では大学以外の会場は10%未満だ。ある関係者は「大学から遠方に会場を設置すると、問題用紙の管理が難しい」と明かす。

 そんな中、受験生の負担を考慮して大学以外の会場を新設した府県もある。京都府の日本海側にある丹後地域では長年、受験生が京都市に前泊を余儀なくされていた。21年、首長やPTAが府に会場設置を要望したことをきっかけに、23年から京丹後市の高校が会場となった。

 長野県では信州大が地域の要望を受け、17年から約85キロ離れた高校に会場を置き、毎年約500人が受験している。

 沖縄は琉球大、沖縄大、県立看護大、名桜大以外に首里高、宮古高、八重山高で受験できる。元文部科学官僚の寺脇研星槎大大学院特任教授(教育行政)は「大学進学が珍しくない時代になったからこそ、会場選定も時代に合わせる必要がある」と注文を付けた。

(共同通信)