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「どう生きる」 高校生、がん経験者に学ぶ「命の出前授業」 沖縄


「どう生きる」 高校生、がん経験者に学ぶ「命の出前授業」 沖縄 出前授業の講師を務めた宮里恵子医師(左端)、玉寄育子さん(左から3人目)、沖縄がん教育サポートセンターの徳元亮太理事長(右端)、中部農林高定時制の小池隆之教諭=16日、うるま市の県立中部農林高
この記事を書いた人 Avatar photo 石井 恭子

 NPO法人沖縄がん教育サポートセンター(徳元亮太理事長)が育成する外部講師によるがん教育出前授業「命の授業」が、県内各地の学校などで行われている。16日はうるま市の県立中部農林高校定時制の3年生を対象に開かれた。外部講師の乳がん経験者の玉寄育子さんらが講話した。2人に1人ががんに罹患(りかん)し、3人に1人が亡くなる時代であることも踏まえ、「死」「怖い」といった一般的な印象を超えて、玉寄さんが病から得た「どう生きるか」という学びに、生徒らが耳を傾けた。

 玉寄さんは40歳でがんの罹患を知らされた後「死ぬかもしれないという恐怖の中にいるだけだった」と振り返った。そうした時期を経て、病状が分かり、治療方針が決まる中で気持ちを取り戻した経緯を説明した。

 1年半にわたった抗がん剤治療や右乳房の全摘手術、放射線治療は「治療より、普通の生活ができるかどうかが心配で仕方なかった」と明かす。子どもの心を顧みられなかった時期もあったという。最後は「普通の生活ができる幸せ」など、病から学んだ感謝の気持ちを語った。

 浦添総合病院の乳腺外科医・宮里恵子さんは、がんの基礎知識について講話した。がんは「石のような腫れ物」「無制限に大きくなる」「周囲の組織に食い込む」ことで、命に関わる場合もあると伝えた。多重的な要因があるが、喫煙や飲酒などの生活習慣を顧みることで「なりにくくすることはできる」と語った。

 インターネットなどで調べるとサプリの購入で「がんは治る」などと出てくるが「絶対うそ」と説明した。「新しくて適切な知識は武器になる」として、罹患した際は、国立がんセンター(がん情報サービス)や大手の製薬会社などのホームページで情報を得て、周囲に相談してほしいと求めた。

講師の話に聞き入る県立中部農林高定時制3年生
講師の話に聞き入る県立中部農林高定時制3年生

 生徒らは治療費などについて質問した。講師らは、収入額に応じて自己負担額の上限を定める高額療養費制度などについて説明した。宮城乙葉さん(17)は情報を得る方法を学び「こう向き合えばいいと分かった」、福山羅海紗さん(18)は「治療した時の気持ちを聞けて参考になった」と話した。小池隆之教諭は「生徒が自分の身に起きた時に思い出し、生きる力を得てもらえれば」と語った。

 同センターはがん経験者の徳元理事長が、経験を生かしたいと2022年に仲間と立ち上げた。病気の正しい理解、がん患者や家族への共感的な理解を深め、命の大切さを学んでほしいと活動する。

 (石井恭子)