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【動画あり】沖縄生まれ、いま注目のシンガー・ソングライター由薫 「もっと明るい場所へ」決意込めた初アルバム <インタビュー全編>


【動画あり】沖縄生まれ、いま注目のシンガー・ソングライター由薫 「もっと明るい場所へ」決意込めた初アルバム <インタビュー全編> 1st ALBUM『Brighter』をリリースした県出身シンガー・ソングライターの由薫=3月21日、那覇市の琉球新報社(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 田中 芳

沖縄生まれのシンガー・ソングライター由薫(ゆうか)が、1月にファーストアルバム「Brighter」をリリースした。2023年2月にリリースした「星月夜」はドラマ「星降る夜に」の主題歌に起用され、デジタル総再生回数は4億回を突破。22年のメジャーデビュー以来、次々と映画やドラマとタイアップし、今最も注目されているアーティストの一人だ。キャリア初となる今回のアルバムには「星月夜」をはじめ新曲「Rouge」など計12曲を収録。インタビューでは、「今よりもっと輝いて、明るい場所に歩いていきます」との決意表明を込めたというアルバム制作の裏側や、沖縄への愛などをまっすぐな言葉で語ってくれた。(聞き手・田中芳)

屋上で花火、首里城を散歩…沖縄での原風景


――由薫さんは沖縄生まれだそうですね。

「1歳の頃まで沖縄にいて、すぐアメリカに引っ越しました。でも毎年夏休みは沖縄で過ごすなど、結構な頻度で帰ってきているので、自分にとって沖縄はふるさとだと思っています。母方の祖父母が沖縄にいて、親戚も多くいます。年末年始などに集まったりするのを大切にしている家族で、みんなで会っています」

「幼少期の夏休みを祖父母の家で過ごしたことが印象深いです。空がきれいで、屋上で花火をしたり、畳のにおいだったり、いろんな情景が記憶に残っています。それを心のよりどころとして音楽を作ることが多く、だからこそ年に3回ぐらい沖縄に戻ってきてしまいます(笑)。それだけ影響力のある場所だと思います。首里城にもよく行きます。龍潭(りゅうたん=首里城のふもとにある人工池)はおじいちゃんと散歩した道なので、思い入れがあります。おばあちゃんがよく作ってくれたトウガンのスープが好きで、他にもぜんざいや、モズク、中身汁など、沖縄の食べ物は全部好きです」

焼失前の首里城と龍潭

――幼少期を海外で過ごしたそうですが、日本に戻ってきた時を振り返るとどうでしたか。

「アメリカに4歳まで、スイスに5歳~8歳ぐらいまでいました。日本に戻ってから公立の小学校に転入しましたが、その頃の出来事は私にとてもインパクトを与えたものでした。カルチャーショックを受けて、文化の違いなどいろんなことを考えさせられ、それらの経験が芸術や自己表現のようなものにつながっていったと思います」

「日本の学校に通っていると、日本語はしゃべれているんだけど本当の意味で意思疎通ができていないと感じることがあったりして。幼いながらに『自分って何なんだろう』という疑問が生まれました。その答えや居場所を、音楽や本、映画や絵といったいわゆるアートや自己表現みたいなところに見つけるようになっていきました。それが今の私につながっている原点なのかなって思います」

――15歳で曲作りを始めたそうですね。

「ギターを弾き始めて2年ぐらいで初めて曲を作りました。その前からミュージカルが好きでした。スイスの学校で『サウンド・オブ・ミュージック』に出演したことがあって、そこで自己表現というか人前に立って表現することを初めて経験しました。ブロードウェイで『ウィキッド』という作品を見たときには衝撃を受けて、CDを何回も聴いて、サウンドトラックを最初から最後まで歌えるくらいはまりました。今の音楽性とは違うかもしれませんが、ミュージカルを通して音楽に対する気持ちが強くなっていったと思います」

沖縄への思いなどを語る由薫

ワンオクToruと見つけた“新たな武器”


――映画の主題歌を作るというオーディションで特別賞を受賞して、本格的に活動を始めました。22年6月にメジャーデビューに至るまでのことを教えてください。

「17歳でオーディションを受けて、22歳でメジャーデビューするまでに間がありました。特別賞をいただいたのをきっかけに、今の事務所に練習生として所属して、たくさん曲を書いたり、ライブハウスで歌ったりということを始めました。ですがその中で『本当にこれが自分のやりたいことなのか』と、迷いというか…覚悟を決めるまでに時間がかかりました」

「私は元々ミュージカルにはまって、徐々に聴く音楽が広がってきたという感じでした。バンド音楽を聴き始めたきっかけが『ONE OK ROCK』のライブ映像でした。日本語と英語の歌詞を織り交ぜる感じや、バンドだけどアコースティック編成で届ける力があるところに憧れました。中学3年から高校1、2年生の時にはアコースティックバンドを組んでONE OK ROCKの楽曲をカバーしたりしていました。だから、メジャーデビューが決まった時にプロデュースはONE OK ROCKのToruさんが担当すると知って、実際に曲をリリースする瞬間までずっと信じられないというかドッキリなんじゃないかという気持ちでした。いろんな伏線がメジャーデビューにつながった感覚でした」

――Toruさんとのタッグで代表曲の「星月夜」など多くの曲をリリースしています。曲作りで受けたアドバイスなどはありますか。

「それまでは一人で音楽を作っていたので、自分と向き合う曲が多かったです。でもToruさんとレコーディングをする中で『多くの人の心につながれる音楽ってどんなものなのだろう』といった話をしたことが、私にとって大きな一歩でした。自分の声には特徴や個性がないかもしれないとも思っていました。でも、この声をもっと生かせたらいいよねという話し合いをできたことが自信につながって、新しい自分に出会うきっかけにもなって、大きな変化をもたらしてくれたと思います」

ファーストアルバム「Brighter」のジャケット写真

「弾き語りは、歌っていて自分がここち良いメロディーに行きがちで、アコースティックギターはナチュラルな部分を反映します。Toruさんとの曲作りでは、声を張ったり力強く歌ってみたりしても、私の声がマッチする部分があることを相談しながら進めました。新しい声を手に入れた感覚でした。いろんな方と一緒に曲作りをすることで、人に見つけてもらって、気づいて、“新しい武器”を手に入れることがあると思います」

大ヒット「星月夜」に込めたメッセージ


――「星月夜」はデジタル総再生回数が4億回を超え、多くの人に聴かれています。

「この曲は既にデモがあって、ドラマの主題歌に決まってから書き直しました。ドラマは恋愛ものですが、命や愛情といった大きなテーマをいろんな登場人物に預けて描いている印象がありました。主演じゃなくても、一人一人のキャラクターにバックグラウンドがあるという作品だったので、登場人物それぞれの曲になるような、フィット感のある歌詞になったらいいなと思って書きました。視聴者の人にも少しでも当てはまるような普遍性のある歌詞がいいと考えて、要素を落とし込んでいきました。たくさんの方々に再生していただいて、どこか共感してもらえる部分があったのだとしたら、自分のやりたかったことが実現できたことになるので、すごく大切な曲になりました」

「曲の大きなテーマの一つが『名前』でした。名前は一人一人が持っているものだけど、込められた意味などは違っている。世の中に『同じ名前』は1人もいないと思います。そして星のイメージは、沖縄から影響を受けています。歌詞に悩むといつも沖縄を心の中で呼び起こしています。『星月夜』のデモを作っている時は、実際に沖縄にいました。沖縄のビーチで、真っ暗な中に星が浮かんでいる様子などを歌詞にしました。どこの国にいても夜空を見上げるという普遍性は、私自身の経験からも直接つながっているのかなと思っています」

凜(りん)としたたたずまいが印象的な由薫

――1月に発売したファーストアルバムのタイトル「Brighter」に込めた思いを教えてください。

「英語で『より輝く』という意味があります。デビューから振り返って、改めて客観的に自分の曲と向き合いました。『星月夜』や『No Stars』など、少し暗めの場所に自分を置いて、光を求めてより明るい場所に手を伸ばすような人なのだと、気づきました。それで『Brighter』と付けました。より輝く、という単純な意味合いから、アルバムをリリースした後は『今よりももっと輝いて、もっと明るい場所に歩いていきます』という決意表明に変わってきました」

「沖縄の皆さんに聴いてほしい」


――最新曲はスウェーデンで現地のアーティストの方と制作されていますが、海外での活動も視野にあるんでしょうか。

「それはすごく目標としています。肩肘を張って海外に行くというよりも、できるだけ自然体で行って曲作りもしたいです。日本と他の国を行き来する中で感じていた自分自身の壁みたいなのものを、音楽で取っ払いたいなっていうのがあります。海外アーティストとの『コライト(Co-Write=共同制作)』を取り入れてみたり、自分の音楽というものにたどり着きたいと模索しているところです」

――3月に開催されたHY主催の「スカイフェス」前夜祭が、沖縄で初めてのライブ出演でした。今後、沖縄でライブの予定はありますか。

「私は沖縄に来るたびにギターも持って来ています。旅行でも帰郷でも。親戚の前とか、おじいちゃんおばあちゃんに弾き語りもしていました。沖縄にすごく影響を受けていますし、大切に思っているので、ライブも絶対にしたいです。沖縄の皆さんに聴いてほしいし、応援してもらえたらうれしいです」


CDの価格は通常盤が税込み2750円。DVD付きの初回限定盤が5500円。6月には全国6都市を回る「由薫 Tour 2024 Brighter」を開催する。

由薫 1st ALBUM『Brighter』

▼配信先:http://lnk.to/brighter-all

▼由薫オフィシャルサイト: https://yu-ka.jp/