地域の未来につなげる喜如嘉翔学校 合同会社キノボリトカゲ 代表 山上晶子さん


地域の未来につなげる喜如嘉翔学校 合同会社キノボリトカゲ 代表 山上晶子さん 喜如嘉翔学校を運営する「合同会社キノボリトカゲ」代表の山上晶子さん。敷地内には旧喜如嘉小学校の面影も残り、レトロな雰囲気も魅力だ 写真・村山望
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

「寓話」の世界観感じてほしい

廃校になった大宜味村喜如嘉の旧喜如嘉小学校を活用した複合施設が2022年6月から始動している。「喜如嘉“翔”学校」としてテナントの運営や体験プログラムの提供、イベント開催などを行っており、今年中には宿泊施設とカフェも加わる予定だ。同施設を運営する「合同会社キノボリトカゲ」は、かつての小学校のように再び活気のある場所にしようと挑んでいる。代表の山上晶子さんを取材した。

やんばるの豊かな自然に恵まれた環境の中にある旧喜如嘉小学校跡地。2016年に村内4小学校の統合に伴い、127年の歴史に幕を閉じた学校が、22年に「喜如嘉翔学校」として生まれ変わった。

運営するのは「合同会社キノボリトカゲ」。代表の山上晶子さんにとって喜如嘉小は思い入れのある場所だったという。「子どもたちもここに通っていたんです。自然豊かな所に学校があるなんて、ぜいたくだなと思っていました」

元職員室にある山原工藝店。宿泊施設とカフェができる別棟への移転を予定している

東京都出身の山上さんは、結婚後、栃木県で陶芸家の夫の工房の手伝いをしていたが、2004年に旅行で魅了された沖縄に移住した。17年に山原工藝店をオープン。19年から21年までは田嘉里共同売店の店主も務めた。共同売店の契約期間を終えた頃に、旧喜如嘉小学校跡地活用事業の募集を知り、自然豊かな環境を生かして何かできないかと思った山上さん。「合同会社キノボリトカゲ」を設立し、公募に応募。22年6月から跡地で事業を始めた。

ものづくりの拠点へ

指定管理ではなく、使用賃貸契約で運営しているため、当初は経済的な負担ものしかかった。廃校後の約6年間、手つかずだった校舎は全てのトイレが流れず、修理が必要となった。それでも「マイナスからのスタートでしたが、全部自分たちでやらないといけないので工夫もするし、内容自体は干渉されないから、自由にできます」とポジティブに受け止める。昨年末には12室のテナントは全て埋まり、「ようやくスタートラインに立ったという感じです」と言う。空き教室には山原工藝店の他、書店、ハンモック・陶芸・木工工房、サウナ、映像作家などが入居している。

ハンモックブランド「方舟(ハコブネ)」のアトリエ。10時間を超えるハンモック手編み体験も人気だ
ハンモックブランド「方舟(ハコブネ)」のアトリエ。10時間を超えるハンモック手編み体験も人気だ

体験型プログラムも

敷地内で育つ月桃を使った草編みや箸作り、ハンモック編みなどのものづくり体験プログラムの他、「土中環境改善体験」やネイチャーガイドツアーなど、自然を体感できるコンテンツも提供している。

イベントの企画なども行い、豊年祭などの地域文化を発信する「HONENFes!!!(ホウネンフェス)」や表現したいことを形にするイベント「芸術縁日」などを開催。4月には、大宜味村の工芸市「いぎみてぃぐま」の開催時期に合わせた工芸やアートのイベント「オクラレルカフェア」と、足元の土壌から地球規模の環境を学ぶ「アースデイ」イベントを予定している。

校庭にある、ぶながやの像。今年中に完成予定の宿泊施設はぶながやの棲み処(すみか)がテーマになっている
校庭にある、ぶながやの像。今年中に完成予定の宿泊施設はぶながやの棲み処(すみか)がテーマになっている

コンセプトは「寓話」だ。やんばるの空気が心地よく流れ、フクロウの親子が樹上にたたずむなどおとぎ話のようだった学校の物語の続きを、行き来する人や生き物たちで紡いでいく場所を目指す。「寓話という異次元の設定に身を置いて喜如嘉翔で時を過ごすことによって、窮屈な世界から離れて自分らしくふるまう機会を自分でつかみとることを後押ししたい。そのためにも宿泊施設とカフェの完成が待ち遠しいです」

(坂本永通子)

アースデイ@喜如嘉翔

4月21日(日)

喜如嘉翔をフィールドにした土壌改良ワークショップ、身近な土木セミナー、地球環境セミナーなどを開催


喜如嘉翔学校

大宜味村喜如嘉2083
TEL 0980-43-0898
(山原工藝店)

Instagram:@kijoka_sho

校舎は当時のまま。敷地内には、掲示板や校歌の石碑などが残る
校舎は当時のまま。敷地内には、掲示板や校歌の石碑などが残る

(2024年4月4日付 週刊レキオ掲載)