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人の本質を問いかける 登場人物の視点で体感 <キングダム展 沖縄へ―その魅力に迫る>4


人の本質を問いかける 登場人物の視点で体感 <キングダム展 沖縄へ―その魅力に迫る>4 展覧会描きおろし「駆け抜ける戦場1」(C)原泰久/集英社
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 読みたいと思いながら読めていなかった『キングダム』。ファンが多いこの作品で、事前知識なしに「キングタム展」を見るのは申し訳なさと後ろめたさがあったが、入り口をくぐったとたん、信(しん)と漂(ひょう)にぐいっと心をつかまれ、春秋戦国時代にタイムスリップした。

 全てを戦で奪い取られた戦争孤児が天下取りを目指し、中華統一をもくろむ物語。壮大なストーリーを存分に表現する、特大のパネルと緻密に書き込まれた原画の世界に引き込まれる。

 「蛇甘平原(だかんへいげん)の戦い」の章では、敵陣のパネルにずらりと囲まれる。いやいや、初っぱなからこれはやばい。たじろぐ私を尻目に信は飛びかかって敵の将を討ち取るのだ。勇敢な信の姿を実際に見上げる。そして特大パネルの王騎(おうき)が信のせりふ通り「でかすぎて解らねェ!」。

 原画展である。並んでいるのは静止画。だが効果音も相まって、映像よりも登場人物に近いところで物語を見ているような錯覚を覚えるのだ。その視点でさまざまなドラマを体感すると、登場人物の死がつらい。「なぜ戦争をするのか。人間ってなんなんだ」。いつの間にかそう考えていた私に秦の王(のちの始皇帝)、嬴政(えいせい)がこう語る。「人の持つ本質は、光だ」。国境を超え中華を統一することが平和につながると自らの言葉で説くから、胸に刺さりまくる。

 では、お前はどう生きるのか―。春秋戦国時代を生きた信や嬴政たちに、そう問いかけられているような気がした。令和の日本に戻ってきた今もずっと考えている。

 (田吹遥子・琉球新報文化芸能担当記者)
 (おわり) 


 「キングダム展―信―沖縄会場」は5月12日まで那覇市の県立博物館・美術館で開催中。当日券は一般1500円、高校・大学生千円、小・中学生500円。問い合わせは同館、電話098(941)8200。