首里劇場に瑞泉酒造そして首里城。首里がロケ地の「不死鳥の翼」、「島ぜんぶでおーきな祭 第16回沖縄国際映画祭」で上映


首里劇場に瑞泉酒造そして首里城。首里がロケ地の「不死鳥の翼」、「島ぜんぶでおーきな祭 第16回沖縄国際映画祭」で上映 岸本司監督(左)が首里を舞台に「不死鳥の翼」を製作。オムニバス2作で構成されており(右から)「夢の残像」出演者の小橋川嘉人さん、「不死鳥の泉」出演者のAKINAさんと大城桜子(ようこ)さん
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4月20日(土)・21日(日)に開催された「島ぜんぶでおーきな祭 第16回沖縄国際映画祭」。期間中に31本の映画上映があり、レッドカーペットやお笑いステージ、音楽ライブなど多くのイベントも行われました。公式発表によると、2日間の総動員数は約55000人とのことです。

映画関連で毎回話題になるのが、新作や未公開作品をいち早く上映する「特別招待」枠。今年特に注目されたのが沖縄を舞台にした2部作「不死鳥の翼」で、ワールドプレミアとしてお披露目されました。舞台あいさつには岸本司監督、出演者のAKINAさん・小橋川嘉人(こばしがわ・よしと)さん・大城桜子(ようこ)さん・真栄城美鈴さん・山内千草さん・蓬莱(ほうらい)つくしさん・光徳瞬(こうとく・しゅん)さんが登壇。終了後に岸本監督・AKINAさん・小橋川さん・大城さんに上映を終えた感想などを聞いてみました。

聞き手:饒波貴子(フリーライター)

俳優の目力感じるマイノリティー映画

「不死鳥の泉」主演した、沖縄出身のAKINAさん
「不死鳥の泉」に主演した、沖縄出身のAKINAさん

―「夢の残像」と「不死鳥の泉」という2つのエピソードでできた「不死鳥の翼」。とても見応えがありました。ワールドプレミアを終えた感想をお願いします。

小橋川:僕が出演した「夢の残像」は実は2021年、3年前の沖縄国際映画祭でも上映しています。今回は「不死鳥の泉」と合わせて2部作になり、印象が全然違うものになりました。他の作品の影響でテイストがこんなに変わるなんてとすごく面白く感じ、めずらしい体験をしたと思っています。「夢の残像」は首里劇場を舞台にした作品ですが、公開前に金城政則(きんじょう・まさのり)館長がお亡くなりになり、今では建物もありません。劇場が映し出される本作を貴重に感じ、思いもひとしおです。関わらせてもらって光栄です。

嘉人さん

AKINA:私と大城さんが出演した「不死鳥の泉」は、去年撮影した作品です。プレミアで初めて見てちょっと泣けました。自分で言うなよ~って感じですけどね(笑)。2部作としての上映になり、続けて鑑賞しながら撮影場所が同じだったり共通する部分があると分かり、生まれてくる言葉に感動しました。みんな1人ずつ、それぞれの人生があると感じたのです。もし1作品だけだったら違う感情で見ていただろうな、と思えます。

―大城さん、「香(カオル)」という役をどういう気持ちで演じましたか?

大城:元気を出すように意識して楽しく演じました(笑)。香は手話で会話をしますが、沖縄のろう者は少しふてくされた印象を持たれるかもしれません。偏見を持たれた経験があり、夢があっても期待しないからです。例えば携帯電話の契約に母親について来てもらうと、スタッフは私にではなく全て母に説明します。そんな時は私が契約するのに・・・私はもう大人なのに・・・と思い、置いてけぼりにされた気分になります。何のために生きているんだろう、と考えることもあります。東京や大阪に比べると、沖縄は障がい者に会う確率がとても少ないといわれています。東京はイベントが多く電車の中でも見かけますが、沖縄では家や車の中にいて、他の人と交わることがあまりないです。接点を持たないとお互い理解ができませんし、社会のアップデートもできなくなると思うんです。気持ちや意思が伝わらず、わがままに捉えられたこともありました。ケースバイケースですがいろいろな出来事があり、周りには期待せず自分で何とかしなければいけないという考え方になっていくんですよね。演じた香は夢を実現させて多くの人に何かを伝えたい、ろう者の目線で見える世界を知らせたいと思っていますが、多分もどかしさがあるのでしょう。でも障がいがあるからと諦めはせず、やるしかないと立ち直る。心の中に情熱がある人だと思います。

―タイトルから、シリアスで静かな2作品だろうとイメージしていましたが、笑いあり夢ありの岸本監督らしい楽しい作品でした。

監督:笑いの要素は大切なので欠かせません。今回は多様性というか、マイノリティーたちの映画を撮ろうという発想から始まりました。というのも、沖縄自体がマイノリティーな土地だと思うからです。古くは薩摩、そして戦争でアメリカの植民地になり、琉球人が見世物になった時代もあったと聞きました。沖縄県民の僕たちはマイノリティーであることを実感し、だからこそ痛みが分かる存在であってほしいと願います。多様性を強調すると、認知的不協和が起こりお互いを認め合うのがつらくなるだろうと思います。なので「何でもいいんだよ、逆に言うとなんくるないさ~」というメッセージを伝えたかった。AKINAさん、嘉人くんが演じた主人公は自分の道を何とか自分で切り開いていきます。そんな主人公に感情移入ができない場合は、存在を認めるだけでいいと思いますし、表現形態のひとつとして知っていただけたらと思います。気楽な感覚でいればマイノリティーかどうかなどを気にすることなく、折り合っていけるんじゃないかなと僕は思っています。本作の俳優さんたちは結局せりふではなく演技、特に目力で表現してくれました。表情豊かで演技のできる俳優さんを集めたので、今回はみんなに大いに助けられましたし、俳優さんの表現が僕が決めていたところを超えていたんです。

AKINA:褒め言葉は、撮影中に聞きたかったな~(笑)。岸本監督の作品に出演するのは、「ハルサーエイカー THE MOVIE エイカーズ」以来10年ぶりだったんですよ。

監督:前にご一緒しているので何でも言えますし、けんかもできます。今回で信頼関係がさらに強まりました。実は「不死鳥の泉」の撮影中に熱発してフラフラしていたんですよ。こんな経験は初めてでしたが、リーダーとして参加してくれていたAKINAさんに、現場を託すことができました。

AKINA:司さん、体調悪い時は哀愁があってすてきでしたよ(笑)。