首里劇場に瑞泉酒造そして首里城。首里がロケ地の「不死鳥の翼」、「島ぜんぶでおーきな祭 第16回沖縄国際映画祭」で上映(2ページ目)


この記事を書いた人 Avatar photo 饒波 貴子

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AKINAさん手話に挑戦

―「夢の残像」は首里劇場がシンボルといえる場所で、小橋川さんが演じた下地の妹ほか、印象に残る人物が多かったです。

小橋川:すてきな方たちばかりで、一緒に本作を製作できたことは喜びです。妹を演じた真栄城美鈴さんとは初共演でした。実生活では姉しかいないので、妹がいたらいいな~なんて思ったことがあったんですよ。芝居を通して疑似体験で美鈴さんと兄と妹を演じられたのは、俳優という仕事ならではですよね。彼女は今もニーニーと呼んでくれので、うれしいんですよ。

―また共演する日が来そうですね。終盤、小橋川さんが首里劇場の舞台に1人で立つシーンや高校生と話すシーンが心に焼き付いています。

小橋川:高校生を演じた蓬莱つくしちゃんは、演技を通してぐっと刺さる感じで向き合ってくるので、しっかり対話してくれていると感じました。台本を読んでいい言葉だと思っていたせりふを彼女が体を使って伝えてくれた時、度肝を抜かれちゃいましたよ。リアルにフリーズしてしまいましたが、あの場面や彼女の言葉は「夢の残像」の大事なテーマのひとつで、見どころだと僕は思っています。

―映画に対する、監督の思いも詰まっていそうです。

監督:「夢の残像」は首里劇場が舞台なので、当然ながら映画をテーマにしました。嘉人くんには役者志望の青年を、「不死鳥の泉」ではAKINAさんに音楽家を、そして大城さんは手話のまま演じていただきました。それらは共感性となり、「夢の残像」の蓬莱つくしさんの言葉を「不死鳥の泉」のAKINAさんが引き受けていると思っています。音楽家を目指していてつらくなったら、夢はかなうのかかなわないのかということだけではなく、音楽がいつも自分のそばにあることに気付くと思うんですよ。それは必ずしも音楽や映画ということではなく、表現だったり好きなものだったりすると思うんです。泡盛かもしれません。「不死鳥の泉」ではAKINAさん演じる奏は泡盛工場で働き始めますが、彼女はきっといいお酒が作れるようになると思いますし、そのお酒を「夢の残像」の下地の妹が飲んで「おいしい」と言ったりする。そんな状況やつながりが多様性だといえるのではないでしょうか!? ただそれは僕が示すことではなく、作品を見た方1人ずつがその後のストーリーを作っていけばいいと思っています。

―鑑賞した人それぞれがストーリーの続きを思い描くのは、すてきな事だと思えます。AKINAさんの演技、サックス奏者を諦めた時は苦しいくらい悲しそうで、久しぶりにサックスに触れた時は本当に幸せそうでグッときました。

監督:悲しむ顔は最高でしたね。

AKINA:だって、大城さん演じる香が「やめたの!?」とストレートに聞いてくるからとても悲しくて(笑)。共感だらけの役だったんですよ。私自身音楽をやっていますし、結婚もしています。離婚はしていないのでバツイチという設定は違いますが(笑)、せりふ1つずつが腑に落ちるというか、演じようという意識はなく言葉が自然に出てきました。岸本監督が書いた台本を私は水のように吸い込み、普通に口に出すことができたと思えます。サックスをやめようと悩むシーンは台本を読んだだけで胸がつまり、口にするのはつらかったです。本当はやめたくないのにという気持ちになりましたし、自分がもしそんな状況になったら同じことを言うと思います。加えて幼なじみの香に何度もストレートに聞かれて心に響き、つら過ぎてどうしようと思いながら演じました。

大城:AKINAさんは、短期間でよく手話を覚えたと思います。普通のせりふと一緒に手話も覚えなければならないし、手話をやりながら声を出すとバランスが難しい中上手くやっていたので、すごいなと思っていました。

AKINA:初めての手話でサックスも吹くシーンもあり、この映画は一体どうなるんだ~って不安でしたよ。