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シネアルテ バブル期らしい豪華な設備 <沖縄まぼろし映画館>155


シネアルテ バブル期らしい豪華な設備 <沖縄まぼろし映画館>155 1993年に撮影された「シネアルテ」。『ザ・シークレット・サービス』と『ボディ・ターゲット』の手描き看板が掲げられている(提供:砂川正宏さん)
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 「シネアルテ」は那覇市松尾の国際通り沿い、現在のハイサイおきなわビル地下1階にあった国映系の映画館だ。

 開館は1989年7月21日。当日は作家の大城立裕、詩人の岸本マチ子、NHKアナウンサーの柴田厚によるトークショーと、沖縄音楽家協会のバンド演奏の後、テリー・ギリアムの超大作『バロン』が上映された。

 設計を担当したのは、前回ご紹介した「シネマ具志川」を手掛けた建築家の親泊仲真さんだ。

 「劇場の作りはオーソドックスですが、設備は良いものばかり。空前のバブル景気ということもあり、国映の担当者のこだわりがすごかった」

 例えば音響システムは当時の最先端である「THXサウンドシステム」を採用。当時の琉球新報と沖縄タイムスの記事では「日本初」と書かれているが、「オキナワグラフ」9月号では「シネアルテが3館目」とある。どちらにせよ早かったことに違いはない。筆者もここで『バロン』を鑑賞したが、迫力ある重低音にうなった記憶がある。特に大砲を打ち鳴らす場面は、砲撃音が振動としてびりびり体に伝わった。音を耳だけではなく「体全体で聞く」という初めての体験だった。

 256席ある座席もスペイン製の高級品が選ばれた。サイズが大きい上に肌触りの良いふかふかの織物生地で、当時の映画館で一般的な小さなビニールシートとは段違いの座り心地だった。また座席の並べ方もそれまでの映画館に比べて傾斜が大きくなっていたので、前列の客の頭を気にせずに映画を見られたのも当時は驚いた。このようにぜいたくな作りは随所に見られた。

 「シネアルテ」は13年間にわたり営業を続けたが、2001年9月30日をもって閉館。「謝恩特別上映」と題して、閉館前日から2日間にわたり『すべての美しい馬』が700円均一で上映された。イラストレーターのイリー・Kさんも足を運んだ一人だ。

 「最終回は超満員でした。劇場最後を飾った作品の割に地味な内容で、ストーリーはほとんど覚えていません。会場もあまり盛り上がらなかった気がします」

 スペイン製の座席は、スターシアターズ(国映の後継組織)の劇場で再利用されているという話も聞くが、定かではない。

 (平良竜次、シネマラボ突貫小僧・代表)
 (當間早志監修)
 (第2金曜日掲載)