昨年12月末から今年1月にかけて、私たちが製作した映画『一生売れない心の準備はできてるか』(當間早志監督)を「首里劇場」で上映、好評を博した。本作は昨年、結成30周年を迎えた沖縄発のバンド「やちむん」のリーダー・奈須重樹の音楽人生を描いた作品である。
作中のメインとなるのが、2016年に開催した「やちむん25周年LIVE@首里劇場」の模様だ。映画を見た客の中には、「首里劇場」で行ったライブを同空間で追体験する不思議さを面白がる人が多かった。
沖縄現役最古の映画館「首里劇場」では、これまで映画興行と平行しつつ、芝居や踊りなどの催しが開催されてきた歴史がある。
その最初期に撮影された1枚の写真がある。戦前よりバレエ指導を行っていた南條みよしが、終戦から2年後の1947年、教え子たちを集めて発表会をした際の集合写真だ。場所は「首里劇場」の前身にあたる露天の劇場である。みよしの娘で、現在は首里でバレエ教室を主宰する南条幸子さんにお聞きした。
当時のみよしは、家族と共に疎開先から首里に引き揚げて間もない頃。全てが破壊された混乱の中で、子どもたちの情操教育がなおざりになっていることに、危機感を覚えた彼女は、舞踊研究所を立ち上げた。早速地域の子どもたちが集まり、ダンスに夢中になった。
やがて彼女は、日々成長する子どもたちの踊りを地域の人々に見てもらおうと発表会を企画する。だが、モノ不足の時代で伴奏に使う蓄音機が無い。そこで音楽の先生方がオルガンやラッパ、バイオリン、ギターなどを苦労して手に入れて楽団を編成。また書き割り(背景の絵)は、美術の先生のお手製。照明もライトの手前に色紙をかざして光の色を変えるなど工夫をこらした。大人たちの手厚いバックアップもあり、発表会は成功。その後も数度にわたり首里劇場にて開催された。
幸子さんは「あの時代にこんなことができるなんて、母の情熱に感動します」と振り返る。
人々の文化への熱い思いを実現させる場となってきた「首里劇場」。今後も、地域やアーティストたちによって活用されていくことを願いたい。
(平良竜次、シネマラボ突貫小僧・代表)
(當間早志監修)
(第2金曜日掲載)