【識者評論】県民意識とかい離した判決 最高裁審査に望むことは… 前田定孝・三重大学准教授 辺野古関与取り消し敗訴


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前田定孝(三重大学准教授 行政法)

 23日の判決は、結論的に原告・県の請求を却下するものであった。しかしながら、県の主張を一部取り入れて、形式上裁決であった場合においてすらも、例外的に国の関与に当たる部分が存在する可能性に言及した。それにもかかわらず、結論的に本件はこの「例外」に該当しないとして、請求を却下した。

 原告・県の主張は、要するに「本件公有水面埋立撤回処分は、沖縄防衛局が行政不服審査法7条2項でいう『固有の資格』における相手方であり、このような不服審査請求は同法が明文で排除しており、そのような不服審査請求に対する裁決は、認容裁決がされてもその前提から成立しえない」というものであった。

 この点、本判決は「当該裁決は法律上の根拠を欠くものとして有効な裁決とはいい難い」ことから「『関与』から裁決を除外した趣旨も妥当しない」かどうかを判断するために、「当該処分を受けた国の機関から行政不服審査法を根拠に審査請求がされ、同じく国の機関である審査庁の裁決により当該処分の取消しなどがされた場合」に当たるかどうかを、今回の判断の基準とした。

 裁判所は、国の機関による「裁決」が「関与」に当たる例外的な場合の存在を県の主張に基づいて認めたのである。この点は評価できる。

 ところがその上で結論において裁判所は、本件が「国の機関は、埋立承認について、一般私人と同様の立場でその相手方となる」ことから、本件裁決はあくまで裁決であって、地方自治法により訴訟対象から除外されるとしたのである。

 さらに本判決は、審査請求人と審査庁とが同一行政主体に所属する場合においてすらも、審査庁は「所管法令を適正に解釈・適用するものとされている」ため、「必ずしも審査請求人と審査庁の利害が共通することにはならない」とした。

 このように、今回のこの裁判所の判断基準とその本件への当てはめは、一般県民の感覚と全く乖離(かいり)している。むしろ、本件の「裁決」こそが、「国の関与」以外の何ものでもないことが、この裁判所が設定した判断基準からも明白だ。今回の判決が、最高裁で改めて純粋な法律論で丁寧に審査されるのを期待したい。

 なお、今回の裁判では、昨年の撤回処分そのものの違法性は、全く審査の対象外である。
(前田定孝・三重大学准教授 行政法)