沖縄県沖縄市の動物園「沖縄こどもの国」では、2020年5~6月にヤクシマザルの赤ちゃん3匹が誕生。SNSを使った投票により「みずな」「とんぐ」「ひろし」と名前が決定した。
同園のヤクシマザルといえば、2019年6月に当時飼育されていた全14匹がおりから逃げ出し、大騒動になったのが記憶に新しい。その際に、「さばみそ」「おはぎ」「おちょこ」などユニークな名前も話題になった。
今回の赤ちゃんザルたちはそれぞれ三つずつ名前候補があり、これまた独特なネーミングセンスが光った。飼育担当者3人が考えたという候補は次の通り。
「おたま」から生まれたサルの名前候補は調理器具つながりで、おはし、さかずき、とんぐ
「ちひろ」から生まれたサルの名前候補は、ひろし(母の名から2文字をとって)、げっこう(鬼束ちひろさんの曲から)、ぼう(アニメ映画「千と千尋の神隠し」のキャラクターから)
「たまこ」から生まれたサルの名前候補は野菜つながりで、みずな、パセリ、しゅんぎく
ヤクシマザルは鹿児島県屋久島の固有種で、ニホンザルの亜種に当たる。
親にあたる「第1世代」は2013年から同園で一般公開が始まり、名前は生まれ故郷の屋久島や鹿児島県にちなんだものが多い。DNA鑑定をしなければ父親が誰かは明確には分からないため、子どもの「第2世代」は母ザル由来で名前を決めているという。
記憶に残る大脱走劇
サルたちが暮らすサル山は2020年に改修工事を終え、6月1日にリニューアルオープンした。前年の脱走劇は、工事期間に移り住んでいたサル舎で起こったもの。
おりの鍵を閉め忘れたことが原因で、同園のスタッフらは「動物園としてあるまじきこと。どうか無事に戻ってきて」と祈るような気持ちだったという。
園の職員に警察や消防、市の職員を加えた総勢100人態勢で捜索。隣接する雑木林や墓地などに潜んでいたサルたちにほんろうされながら3日間かけて全て捕獲した。
サル山リニューアルでより間近に
「脱走事件」以降、2人以上で施錠のダブルチェックを行い、基本動作を改めて明文化するなど対策に取り組んでいるという。新しくなったサル山は、生息地である屋久島の自然に近い環境をイメージし、植栽や水場(池)を設けた。
トンネル型の観覧通路をもうけるなど、サルたちの暮らしを間近で見ることができる。暑い日には水遊びしたり、霧状に水が噴き出すミストに口を開けて近づいたりする様子も見られる。
飼育担当の中村智映さんによると、引っ越しに際して事前にサルに何種類かの木を「試食」させ、食べない木を選んで植えたという。ところが、緑豊かなサル山が見られたのはいっときで、1カ月もしないうちにサルたちが葉だけに飽き足らず樹皮までかじってしまった。中村さんは「サル舎に木を植えるのは難しいと聞いてはいたが予想以上の早さだった。こちらが思っていたのと違う動きをするのも野生らしくていい」と試行錯誤を続ける。
沖縄こどもの国は2020年、開園50周年の節目を迎えた。スタッフの高嶺きよ子さんと金尾由恵さんは「まず一番は動物たちを『かわいい、守りたい、大切にしたい』と思い、愛着を感じてほしい。そして身近すぎて気づかないような地域の自然に目を向け、動物たちとの共生について一人一人が考えるきっかけになればうれしい」と話した。
(大城周子)
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