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ハーバード卒のバイオリニスト兼起業家! 廣津留すみれさんってどんな人?【WEBプレミアム】


この記事を書いた人 Avatar photo 稲福 政俊
廣津留すみれさん

 世界屈指の名門、米ハーバード大学や芸術部門で世界大学ランキング1位のニューヨーク・ジュリアード音楽院を首席で卒業し、現在はバイオリニスト兼起業家として多彩に活躍する廣津留(ひろつる)すみれさん。3日、社会課題の解決に取り組む起業家や学生らが交流するカンファレンスイベント「LEAP DAY2020」のプレイベントにオンラインで出演しまし、沖縄科学技術大学院大学で最年少管理職の下地邦拓さんと対談しました。
 なぜアメリカに?なぜハーバードに?そしてなぜ、その後バイオリニストに?異色の経歴を歩む廣津留さんのこれまでと留学中の経験など、講演の中からたっぷり紹介します。

(稲福政俊)

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■120%の力を出している人たちがいた

 ハーバードは4年間過ごして、ジュリアードは2年間通い修士を取りました。その後、ニューヨークで起業しました。基本的には演奏活動が多いです。ファイナルファンタジー15のサウンドトラックにも参加しています。アメリカ生活はだいたい8年くらい。今はニューヨークで生活しています。 

 小学校3年生のときに初めて音楽コンサートに参加しました。初めて回りと自分の実力を比べた経験です。大分では回りに(音楽をやっている人が)少なくて、比べる相手は巨匠のCDでした。

ハーバード大があるボストンの街並み(フリー素材)

 なぜアメリカの大学に行ったのか、というと、ハーバード入学の直前、2009年に初めての海外でイタリアのコンクールで優勝して、アメリカの演奏ツアーに参加できることになりました。ツアーの最後がニューヨークのカーネギーホールでした。アメリカの大学はどんなものだろうと思って、ニューヨークから近いボストンにあるハーバード大学のツアーに参加しました。

 すると課外活動もフルでやっているし、勉強もめちゃくちゃやっている。みんなが全てのことに120%の力を出しているのが印象的でした。アメリカの大学に行こうと思っていたわけではありませんが、足を運ぶ機会があったので(行って知ることで)モチベーションになりました。

■ハーバードの入り方

ハーバード大の校章(大学HPから)

 ハーバードは1学年1600人くらいいて、アメリカ人以外は10%くらい。日本だと経済学部とか、法学部と(入試時に)決めるが、アメリカは入ってから好きな専攻を選べる。専攻の数はめちゃくちゃ多い。科学でも多くの種類があり、東アジア研究、言語学、歴史もいろいろあります。

 私は2年生の終わりで応用数学を専攻しましたが、その後、社会学に変えました。社会学と音楽のダブルメジャーだったら面白いと思って音楽やグローバルヘルスを追加して。紆余曲折を経て音楽とグローバルヘルスで卒業しました。

 日本は高校の成績よりもペーパーテストで合否が決まりますが、アメリカは高校の成績がかなり大切です。課外活動で何をしていたのか、英作文、エッセーでどうアピールできるか。面接では人間力が問われます。日本のセンター試験みたいなのものありますが、とにかく総合点です。人間としてどのような経験を積んできたのかをみられるというのがアメリカの入試の特徴です。面接はスカイプ、英作文はオンライン提出でした。アメリカに行かずに受験できます。

■「ググる」癖が良かった

 留学前にやっておいて良かったことは、英語は当然ですが、何でも疑問に思ったことは聞く、「ググる」癖があったこと。分からないまま放置するともったいないので。

イメージ写真

 あとはあいさつです。外国に学びに行くといろんな人と会う。当たり前のことですが、マナーは社会人になっても大事です。あとは特技、自信を持つこと。私はバイオリンをやっていたので自信がありました。英語がしゃべれないシチュエーションであっても、音楽という世界の共通言語が使えると思うと、どんな人とも臆せず話すことができました。

■音楽の道へ ヨーヨー・マの言葉がヒントに

 ハーバード生の卒業後のキャリア選択は多様です。コンサルタントやホワイトハウス勤務だけじゃなくて、音楽をやる人やコメディアンもいます。(俳優の)ナタリー・ポートマンもハーバード卒です。本当に幅広い。このような先輩がいてよかった。友人の中にも、お笑いショーの脚本を書くコメディアン、ロースクールに通う人など、みんなが違うことやっているので刺激になります。

イメージ写真

 ハーバードに入ったときは音楽を専攻すると1ミリも思っていませんでした。

 在学中に(世界的チェリストの)ヨーヨー・マと共演する機会に恵まれました。音楽を弾くのは自分が楽しいから弾くのではなくて、何か伝えるものがあって社会貢献につながるということを、ヨーヨー・マ先輩から学び、音楽家を目指すことにつながりました。

■目標達成に向けた時間の使い方

 (ハーバード大を卒業して通った)ジュリアード音楽院はマンハッタンの真ん中にあります。生徒数は全体で850人。とても小さい学校です。専攻は音楽と演劇とダンスです。

 1回も音楽の学校に通ったことがなかったので、予備審査の2カ月前にジュリアードを受けようと決めて猛練習しました。その頃の廣津留すみれは「地下にいる生き物」と思われたくらい地下にこもって練習しました。

 私は長期の目標を立てないのですが、短期で2カ月後に提出すると決めたらめちゃくちゃ練習します。

 音楽家はやめたいと思ったことは全くなくて、「歯磨き、ごはん、バイオリン」くらい、日頃の習慣になっていました。(バイオリンが)ない生活がありえない。練習が嫌でも本番に出るのが楽しかったので、何よりもモチベーション。終わりがないのが肝です。いくらでも自分の腕を磨き続けられるし、上には上がいて常にインスピレーションもらえます。

伝えたいものを持ち続ける

 プロの音楽家として生きるのはどういうことか。うまいのは当たり前。ただ、どうやったらお客さんが喜んでもらえるかとか。客観的に自分を見る癖がある。
今までがこうだったからこうしないというのがあまりなくて、バイオリンならこれもこれもと開拓できる。今までがこうだったからと現状に甘んじてはいけないと思っています。バイオリンを通して新しいことに挑戦し続けることが大事。

 伝えたいものを持ち続ける。表現がたくさんできるからといって、何か伝えたいメッセージがないとぼやぼやっとした演奏になることもあるので、自分で「今日の演奏会は絶対こういう思いを伝えたい」という思いを常に持つようにしたいです。

「挑戦するのはあくまでも自己ベスト」

OISTの下地邦拓さん(右)と対談する廣津留すみれさん

 高校の時に入試があるのでピアノを辞めるという友達たくさん見てきましたが、辞めないでほしい。両立は絶対できる。私はバイオリンしながら勉強をしたから生活が効率的になりました。熱意があれば、何でも可能。若いときに自分で時間の使い方を工夫することが、後で財産になります。親とか先生から言われたから辞めるのではなくて、じゃあ自分は何をやりたいのかひたすら自分を追い求めてほしいと思います。

 今はすごく難しい時です。2020年は飛ぶように去って行きました。でも、何もしなかったと焦る必要はないと思っています。

 人のペースを気にしすぎると良くない。自分の成長率が低いとか。塾で人と比べてできないと思っても、自分にはほかの人にない良さがあるので、比べて落ち込むのではなく「私にはこれがあるから大丈夫」と思えるようになればいい。挑戦するのはあくまで自己ベスト。

 私はひたすら目標は刻みます。2カ月後に録音を提出するなら、1カ月後にはこれができてないといけない、1週間後はこれ、今日はこれと、「To Doリスト」に落とし込むという作業をやることにしています。どんどん細分化すると、今日やることって以外とあるじゃんとなります。悩まずにとにかく行動しよう。

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プロフィル

廣津留すみれ

 (ひろつる・すみれ)1993年大分市生まれ。バイオリニスト。大分上野丘高校を卒業後、ハーバード大学に入学し、首席で卒業。その後、芸術部門で世界大学ランク1位のニューヨーク・ジュリアード音楽院に入学。卒業時に2人だけに与えられた最優秀賞を受賞、修士号を取得。大学院卒業後にニューヨークで起業した。世界的チェリスト・ヨーヨー・マとたびたび共演。ゲーム音楽などジャンルにこだわらず活躍している。著書に『ハーバード・ジュリアードを首席卒業した私の「超独学術」』(KADOKAWA)、『新・世界の常識』(同)など。