実在する広島のストリップ劇場を舞台にした映画「彼女は夢で踊る」(時川英之監督)が、5日から那覇市の桜坂劇場で公開されている。SNSで話題を呼び、東京の映画館では連日満席となった。制作のきっかけや現場の様子を、時川監督と企画・出演を務めた横山雄二に聞いた。 (聞き手・藤村謙吾)
―映画は、何度も閉館を宣言し、そのたびに復活を繰り返したストリップ劇場「広島第一劇場」が舞台だ。なぜここを舞台にしたのか。
時川 初監督作の『ラジオの恋』を見た俳優の加藤雅也さんが「一緒に映画を作ろう」と声を掛けてくれたのがきっかけだった。加藤さんと横山さんと食事をした際、当時(2016年ごろ)閉館すると宣言していた広島第一劇場の話題となり、舞台に決まった。撮影開始時、実際閉館したので劇場で撮影したが、撮影途中に館長が「やっぱりやる」と再開した。映画が完成するときには「さすがに閉館する」と言っていたので作中は「閉館」としたが、完成後も劇場は続いている。
―主人公の館長を演じる加藤をはじめ、撮影現場はどんな様子だったか。
横山 加藤さんは館長がひょう依したようだった。排他的な感じだが愛がある。劇場の踊り子さんたちも最初のシーンを見て「館長だ」と泣いていた。加藤さんというハリウッドでも活躍された方を根っこに、劇場で舞台に立つ矢沢ようこさん、犬飼貴丈さん、岡村いずみさんが集い、野球の合宿のような雰囲気で撮影が進んだ。劇場が出す独特のムードに乗せられて、どんどん良くなっていった。
時川 加藤さんは撮影の最初から現場に入って、さまざまな提案をしてくれた。小さい所帯だったので、出演者とディスカッションし、脚本をあえて崩しながら作った。だから幻想的な、抽象画のような雰囲気が出せたと思う。
―ストリップ劇場というとみだらなイメージがあるが、作品は純粋なラブストーリーに仕上がっている。
時川 実際に劇場を訪れたとき、ステージにつながる階段に踊り子さんのキスマークがたくさん付いた壁を見つけた。壁を見て、舞台に立った踊り子さんたちの人生が思い起こされ、ラブストーリーを書こうと思った。
横山 最初、僕はコメディータッチの脚本を書いて持っていたが、監督が見て残っていたのは主人公の名前くらいだった。完成品がこんなに豊かできれいな映像で、涙させられるものになるとは思わなかった。自信作だ。
美しく描くストリップ劇場、SNSで話題に 映画「彼女は夢で踊る」時川監督らが語る制作裏話㊦