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沖縄の本屋は癖になる…カラオケ兼業、古本が混在 島を巡ったライターが語る魅力とは【WEB限定】

沖縄はじめ全国各地の離島の書店を取材した本『離島の本屋 ふたたび』

 どこから見ても個人宅のような古本屋、新刊本と古本がチャンプルー状態の書店…全国の離島の書店をまわった『離島の本屋』(2013年)の著者・朴順梨さんが沖縄県内の書店を含め新たに30店舗を取材した本『離島の本屋 ふたたび』が2020月10月30日に、ころから社から出版された。朴さんが「とにかく面白い」と語る沖縄の書店。他県にはないその特徴は?魅力とは?(田吹遥子)

 

 

■内陸県に生まれ、海に憧れて…

 朴さんが全国の書店を取材し始めたのは2005年から。北は礼文島から南は与那国島まで全国各地30の島をまわり、取材した書店は約60店舗。きっかけは当時、都内で"カリスマ書店員"と称されていた人と談笑していた時の一言。「離島で本屋さんをしている人とおしゃべりするのって楽しそう」だった。「海なし県に生まれたこともあって、島に対するあこがれもありました」。当時連載していたフリーペーパー「LOVE書店」の企画として即採用。こうして朴さんの離島の書店巡りの旅が始まった。

 取材するにつれ、離島の本屋が島民が集まる場所であること、住民のニーズに応えて営業している店が多いことが分かってきた。中には代々家業として書店を営み、100年以上続いている店もあった。

 沖縄を初めて訪れたのは2016年。宜野湾市長田にある老舗の古本屋「榕樹書林」からスタートした。その後は出版社ボーダーインクの喜納えりかさんのガイドの下、那覇の市場内にある小さな書店からブックカフェ、宮古島、石垣島の店舗を訪ねた。今年2度目取材に出かけた際は、うるま市内の「大城書店」ほか個人営業の複数の書店を取材した。これまでで訪ねた沖縄の店舗は計22店舗になる。

 

■沖縄の人は沖縄の本が好き


沖縄本がたくさん置いてある書店はカラオケパブも兼業している「おきなわ堂」。店主の金城牧子さん(朴さん提供)

 沖縄の書店を取材して朴さんが気づいたことは「古書と新刊を並べて売る店がある」ということ。ジュンク堂やリブロなどの大型店舗でも古本屋のコーナーがあって古書が並んでいたことに驚いたという。「新刊だろうが、古書だろうが、読みたいものならどちらでも気にしないという感じが新鮮でした。でも確かに本屋なんだから本来どちらも売っていいんですよね」。他県には「ほとんどない」というが、都内では最近になって新刊と古本を合わせて売る店も出てきているという。「ある意味、沖縄は先駆けていると思います」と評価する。

 次に気づいたのは「どこの本屋でも沖縄の本を必ず置いている」ということ。「(店主に)聞いてみると、沖縄の人が沖縄の本を買ってるんです。沖縄の人は沖縄のこと好きだから沖縄をテーマにした本を手に取るみたいです」。一口に「沖縄本」と言えども「バリエーションがある」とも指摘する。「ボーダーインクさんが出版している『那覇・末吉公園を歩く 楽しい植物ウォッチング』(身近な植物をみる会編著)にも驚きました。こんなにニッチなところにも需要があるんだと」。歴史や基地問題、文化などから近所の草花の本まで。「(県外の人も含めて)広く読まれることを意識した本と沖縄の地元の人にウケる本がある。この2つが成り立っている文化がすごく不思議」と語った。

 

■増える個性的な本屋さん


見た目は完全に個人宅の古本屋「麻姑山書房」(朴さん提供)

 さらに、朴さんを驚かせたのは新たにオープンする個人経営の書店があるということ。沖縄書籍組合によると組合員は27組合員と減少傾向にある。しかし、古本を中心にした個人経営の店舗では新しくオープンする店も出てきている。

 那覇市首里にある「おきなわ堂」はなんと、カラオケパブ兼書店という珍しい営業形態。朴さんは「こちらは沖縄本がとても充実しているんです」と話す。一見住宅にしかみえない那覇市古島の「麻姑山書房」は宮古から移転した古書店。八重瀬町の「くじらブックス」ではフェミニズムやLGBTなどこだわった棚作りが印象的だったという。「古書もおいている個人経営の店は店主のこだわりを強く出せる」と話す。

 『離島の本屋』の出版社「ころから」の木瀬さんは個人書店の利点を「売りたくない本を売らなくていいこともある」とも推測する。

 

■「頑張って続けてください」は正解か

 とは言え、時代の流れで全国的に減りつつある小さな町の本屋。『離島の本屋』には、書店を訪ねたその後の話もつづられている。その中には閉店してしまった店のストーリーもある。そんな人たちへの取材を通して朴さんが悩んだことがあった。

 「今までは『頑張って続けてください』と声を掛けていましたが、果たしてそれが正解なのかと思ったんです」。
 後継者がいない、人口が減り本が売れない…さまざまな理由で店をしまう決断をした店主を前に疑問に思えてきたという。「やめないことがだけが正解ではない。本屋さんをやっててよかったと思えたならそれがいいのではと思えてきました」

 時代の流れと共に変わる書店の数、形。現在、沖縄で書店を開こうと思う人たちがいる理由について朴さんは「分からないんです。何でだろうと不思議!でもだからこそ面白い。また来たくなりました」と目を輝かせた。



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