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ワーケーション「先進地」へ 日本屈指のリゾート・恩納村が挑む官民連携<変革沖縄経済>14


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恩納村へのワーケーション誘客に向けて整備されたコワーキングスペース「UNNAわーく」=恩納村コミュニティーセンター

written by呉俐君

 政府が勧める「新しい生活様式」に合致した働き方として注目を集めているのが、旅先で仕事をする「ワーケーション」だ。新型コロナウイルスの影響で勤務場所を選ばない「テレワーク」を導入する企業が増えている中で、沖縄へのワーケーション誘客につなげようという受け入れの動きが加速する。沖縄総合事務局は年間約11・2億円の経済効果が期待されると試算する。

 誘客に向けては、民間企業だけでなく自治体も、テレワーク施設のインフラ整備や、滞在中の体験事業の創出などに知恵を絞っている。

 沖縄本島西海岸のリゾート観光地である恩納村は、2020年9月に村コミュニティーセンターの一部を改装して、テレワークの作業場として自由に使えるコワーキングスペース「UNNAわーく」を開所した。テレビ会議システムを導入した会議室も備える。

 本格的にワーケーション誘客に乗り出した背景について、施設を運営する恩納村商工会の安村祥子事務局長は「恩納村に年間約280万人(19年村商工観光課調べ)が訪れるが、平均滞在日数は1・8泊(15年同商工会調べ)にとどまる。延泊してもらうため、来訪の目的づくりが大事だ」と説明する。

 施設整備のほか、仕事をしながら、サンゴの植え付けなど環境保全をテーマにした体験メニューも提案する。「ワーケーションは全国各地が注目している。他地域と差別化を図らないと、誘客につながらない」(安村事務局長)と誘客合戦が過熱する中で、環境と経済が調和した「持続可能なリゾート観光地」を前面にして誘客に取り組んでいく戦略だ。

 ワーケーションリゾートとして、村内にある関係施設との連携も図る。商工会では、村観光協会やリザンシーパークホテル谷茶ベイ、ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄との間で、相互の施設案内も計画している。安村事務局長は「各施設が持つコワーキングスペースのタイプはそれぞれ違う。相互案内は利用者にとって気分転換にもつながる」と相乗効果に期待する。

 国際物流拠点産業集積地域に指定されるうるま市は、ワーケーションの推進を通して市内に新たなビジネスの創出を狙う。

 20年度に新規に事業化した「共創型ワーケーションモニターツアー」で、個人事業主や企業人事担当など県外から参加者を募集。うるま市内での3泊4日の滞在中、参加者は仕事をしながら、酒造所や養鶏場なども見学した。

 市経済部企業立地係の玉那覇謙太さんは「モニターツアーを通して、県外の事業者らと地域の人材との交流が図れる。新しいビジネスの創出や、県外企業のサテライトオフィス(出先拠点)の設置にもつながってほしい」と期待する。

 一方、ワーケーションには課題も指摘される。沖縄総合事務局が18年9~11月に実施した沖縄テレワークモニターツアーの参加者アンケートで、最も感じる課題として、サテライトオフィスの「情報セキュリティー」、参加者自らの「労働管理」が挙げられた。

 沖縄総合事務局コンテンツ産業支援室の鶴見有衣課長補佐は「現状としてワーケーションできる人は、フリーランスや企業の代表などに限られる。今後、推進していくには、企業側がどこまでワーケーションを認めるかも重要な要点となってくる」と指摘する。

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