「大切な家族を守るために」 ジャパンパラへ追い込み 車いすラグビー・仲里進<憧憬の舞台へ>


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ゲーム形式の練習で走り込む車いすラグビー日本代表候補の仲里進=2020年7月

 車いすラグビーでパラリンピックに4大会連続で出場している仲里進(しん)(アディダスジャパン)が、東京パラの代表選考に関わるジャパンパラ(3月20~21日、千葉ポートアリーナ)へ追い込みを掛けている。銅メダルを獲得した2016年のリオパラ以降、競技に専心することが難しい時期を乗り越えてきた。「今は何よりも目の前の大会が大事になる。体を絞って動きの切れを戻す」と闘志をたぎらせている。

 仲里には競技に全力で集中できない時期があった。2017年3月に母・さちみさん、翌年9月に父・吉見さんを亡くした喪失感が大きかった。さちみさんにはポリオ(小児まひ)の後遺症があり、吉見さんは仲里と同じ先天性多発性関節拘縮症だった。「同じように障がいがあった分、つながりが強かった気がする」。失意から競技に打ち込めず、18年からは代表合宿に呼ばれない時も増えた。

 それでもパラ代表選考が大詰めの昨年2月、代表合宿に招集され、3月のジャパンパラでメンバー入りした。東京パラのプレ大会に位置する国際大会だ。自然と奮い立った。だが、大会はコロナで中止になり、東京パラも延期が決まった。以降は1年後を見据えて段階を踏んだトレーニングを積んだが、「モチベーションが下がった時期もあった」と正直に明かす。

 しかし今、再び気持ちを高ぶらせている。理由は12年のロンドンパラ直後に出会い、支えてもらった愛理さんと昨年11月に結婚したためだ。両親を失った時も彼女の存在が前を向く原動力になった。「大切な家族を守るためにアスリートとして活躍しないといけない」。照れを隠すように話しながらも、言葉に力がこもる。

 今年のジャパンパラはバランス良く構成された日本代表候補3チームによる国内戦となる。世界トップクラスの米リーグ時代から付き合いがあるケビン・オアー監督の意図は分かっているという。選手と監督、代表を兼務する沖縄ハリケーンズを率いて日本選手権で5度優勝してきた。43歳と若くはないが、経験値を生かして若手を引っ張り、期待に応えるつもりだ。

 昨年末からコロナ禍でチーム練習ができないため、現在は週5回、体育館での走り込みやプールトレーニング、パーソナルトレーナーとの自主トレなどで筋力、体力面を強化。ビデオを確認しては試合のイメージを膨らませている。

 東京パラへの出場が決まれば、車いすラグビーで前人未到の5大会連続出場となるが、意欲は尽きない。「理想だが、50歳を越えてもやれるところまでやりたい」とその先のパリ、ロサンゼルスまで見据えている。末永く続けるためにも「まずは目の前の目標でアピールする」と準備を進める。

(古川峻)

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