prime

リアルな旅ができない…オンライン観光で顧客開拓 コロナ後のPRツールにも<変革沖縄経済>16


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
テレビ会議アプリZoomを使って那覇市内を案内するガイド(セルリアンブルー提供)

written by 中村優希

 コロナ禍で生まれた新たな旅行の形として「オンライン観光」がある。感染症対策で海外渡航や国内の往来が制限される中、旅行先と自宅を中継でつないで旅行気分を味わう。実際の旅行より価格が安く、気軽に「おためし旅行」ができることで、観光のPRにつなげられるメリットがある。

 旅行社のセルリアンブルー(那覇市)の砂川盛潤社長は「(コロナ禍を)黙って耐えているわけにはいかない。沖縄で一番のオンライン旅行商品を作る会社にしよう」という目標を掲げ、オンライン商品の開発に取り組んでいる。

 同社はコロナ前まで、全体の6割が外国人客だった。2020年1月には過去最高の業績となっていたが、中国でのコロナ発生で外国人客が激減。4月には臨時休業に追い込まれた。ほぼ仕事がなくなった中でも社内会議を開き、オンライン商品に力を注いだ。

 オンライン観光は、テレビ会議アプリZoomを使って現地をリアルタイムで映し、ガイドが案内する。客は遠隔にいながらスマートフォンやパソコンで映像を見て、沖縄観光をバーチャル体験する。ガイドと会話を交わすこともできる。

 同社では斎場御嶽(せーふぁうたき)などの定番観光コースのほか、糸満市内を巡るツアーなど、沖縄観光では珍しい内容の商品も提供している。糸満市のツアーでは洞窟拝所の「白銀堂」や街を一望できる高台「山巓毛(さんてぃんもう)」、県内最大級の共同墓「幸地腹・赤比儀腹両門中墓」などをガイドの説明を交えながら案内する。

 担当の東江優氏は「普段の観光では通り過ぎる場所にも気付くことができる」と話す。ガイドの説明で学びの要素を取り入れ、定番コース以外の沖縄観光の魅力を伝える。

 また、お年寄りや体が不自由などの理由で沖縄に来たくても来られなかった人が参加するなど、新たな需要も生まれている。昨年は県外の特別障がい支援ネットワークから3人が、歌って踊れるバスガイドが案内するバーチャルツアーに参加した。

 観光地と利用客をオンライン中継で結ぶだけでなく、体験キットを自宅に送付するなど商品内容のバリエーションも広がっている。

 農業生産法人オルタナティブファーム宮古(宮古島市)は、これまで修学旅行の事前学習としてオンラインで提供していた「サトウキビの魅力丸かじり!お家でリモート農体験」を、コロナ禍で一般向けに販売を始めた。サトウキビの植え付けから黒糖作りまでを体験できるキットを送付し、宮古島の農園と中継でつなぐ。75分間の体験終了後も、1年かけてサトウキビの苗を育てる体験ができる。松本克也代表は「参加者には宮古島に来たことがない人や、サトウキビをかじったことがない人が多い。プロモーションとしてコロナ後も続けていく」と話した。

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)でも本年度から、事業者のオンライン旅行商品造成を支援する事業を始めた。誘客事業部国内プロモーション課の新垣錬氏は「コロナ後に来てもらうためにどれだけPRできるかが大事だ。実際に来てもらうためのプロモーションツールになる」と狙いを語った。

【関連記事】

▼来年元日は既に満室「百名伽藍」の逆転発想
▼プライベート機と独立ヴィラで3密とは無縁「ジ・ウザテラス」
▼ハイアット、星のや…ブランドホテル進出の商機と懸念
▼「体力持つか…」老舗・沖縄ホテルを襲うコロナの逆風
▼脱観光業「宿泊客ゼロでいい」ヤンバルホステルは人生を提供する