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オリオンのネット通販は注文200倍 コロナ禍で活発化するEC <変革沖縄経済>18


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
オリオンビールEC課の妻夫木友也課長(右)ら=8日、豊見城市の同社

written by 沖田有吾

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、物の「売れ方」は大きく変化した。

 政府が公開している、地域経済分析システム「V―RESAS」によると、2020年の県内の消費額は、小売業全体ではほとんどの期間で前年を下回った。対照的に、人と直接対面せずに購入できる電子商取引(EC)による消費額は、1月と9月を除く全ての月で前年を上回った。

 県民、観光客という直接の来店者だけでなく、マーケットを沖縄の外まで広げられることから、多くの企業がEC強化に注力する。

 オリオンビール(豊見城市、早瀬京鋳社長)は、昨年7月5日の「名護の日」にEC専用サイトをリニューアルした。通信販売用のページを設置していたが、申し込んでから銀行振り込みが必要なことから利用者は少なかった。コロナ禍を受けてリニューアルを前倒しし、商品ラインアップを充実、注文から決済までウェブ上で完結できるようにして使い勝手を改善した。

 売り上げなどは非公開だが、2月の注文件数は19年と比べ約200倍に伸び、1回当たりの購入量も増加しているという。沖縄を訪れることができない「沖縄ファン」のニーズをつかんで急速に拡大している。

 サイトのリニューアル直後、最初に売り切れたのは、看板商品の「ザ・ドラフト」や人気の高い限定商品ではなく、居酒屋などでディスプレーに使われるオリジナルの「ちょうちん」だった。遊び心で販売したが、予想外の反響で発売開始から数日で売り切れた。他にもジョッキやグラス、Tシャツ、バッグなど、オリジナルグッズ全般で好調な売れ行きを保っている。

 妻夫木友也EC課長は「毎年沖縄を訪れるような沖縄ファンが、オリオンに沖縄の雰囲気を重ねてくれている。これこそオリオンのブランド価値だと改めて気が付くことができた」と振り返る。

 現在、サイト利用者の95%以上が県外在住者で、中でも首都圏からの注文が半数近くを占める。プレミアムクラフトビールの「75BEER」や、限定商品を含めた缶酎ハイの「WATTA(ワッタ)」などが人気だ。毎月24本セットを5500円で届ける定期宅配サービスも、限定商品などが購入できることから順調に利用が伸びている。昨年10月に発売した首里城再建支援デザインのザ・ドラフトは、通常版に比べて約6倍の売れ行きを記録した。

 県内企業とのコラボレーションにも、積極的に取り組んでいる。那覇市の奥原硝子(がらす)製造所は、1952年創業の琉球ガラス工房だが、コロナ禍で収入の柱の一つだったガラス吹き体験が大きく落ち込んだ。オリオンからコラボを持ち掛け、これまでにロゴ入りのビアタンブラーとビアグラスを発売、ともに数日で売り切れた。3月中にも第3弾の発売を計画している。

 商品販売だけでなく、琉球ガラスや同製造所の歴史、若手職人の思いを紹介する記事も掲載し、反響を呼んだ。

 奥原硝子製造所のEC担当・宮城正美さんは「こんなに琉球ガラスを求めてくれているのかと驚いた。単体では情報発信に限界があった」と話す。妻夫木課長は「今後も良い商品を発信し、日常生活に沖縄を届けていきたい」と意気込んだ。

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