ハンドボール東江、重圧と覚悟を胸に 不動の司令塔…強豪国と渡り合い成長実感<憧憬の舞台へ>


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デンマーク戦でシュートを放つ東江雄斗(Yukihito Taguchi/JHA提供)

 ハンドボール日本代表の東江雄斗(興南高―早大出、大同特殊鋼)が1月の世界選手権で強い存在感を放った。欧州の強豪であるクロアチア戦でゲームを組み立てる役割を全うし、自らもチームトップタイの5得点を奪って引き分けに持ち込んだ。王者デンマーク戦では敗北したものの6度の7メートルスローを全て決めた。全試合でゲームメークを託された不動の司令塔が東京五輪でも試合を動かし勝利へと導く。

 世界選手権では熊本大会以来24年ぶり2度目の1次リーグ突破を果たし、計2勝を挙げて19位に入った。1勝もできず最下位だった前回大会から2年。国際試合を重ねてきた経験値が確実に力になっている。

 中でも2次リーグ最終戦のバーレーンとの試合は「最も成長を感じた一戦」と振り返る。昨年のアジア選手権では2戦して、いずれも1、2点の僅差で勝利する接戦を展開した相手。今回は前半から大量リード。行き詰まって逆転される傾向にあった後半も大きく崩れることなく29―25で勝利した。自らは1得点でも両隣の吉野樹が9得点、渡部仁が8得点と、回りを引き立て躍動させた。攻めどころを見極めたパスや展開など「余裕を持ってゲーム運びができた」とイメージ通りに試合を統制できたという。

 4年前に就任したダグル・シグルドソン監督の下で世界選手権、アジア選手権を2回ずつ経験した。多くの敗戦から培ったメンタル面の成長に戦術理解も深まり「自分が判断ミスしたら監督が都度、指摘してくれる」と信頼関係が試合中の修正力にもつながっている。

 セットオフェンスでもカットインやポスト攻撃などで確実にシュートに持ち込めるようになった。速攻からの得点も増え、世界選手権の6試合中デンマークとアルゼンチン以外は29点以上を挙げた。「勝負どころでそれなりのゲームメークができていた。試合中の選択肢が多く持てていた。それを的確に判断できたのは大きな収穫になった」と手応えは十分だった。

 東京五輪の1年延期も黙々とウエートを強化し、日本リーグの中で「より高い意識のレベル」でプレーを続けた努力は裏切らなかった。五輪は強豪国にチャレンジし8強に勝ち上がることが、第一段階の目標だ。強豪国にも終盤まで勝負がどう転ぶか分からないようなゲームはできるようなった。

 試合がもつれるほど重要性が増すゲームコントロールを担う。ゲームの最終盤では勝負強さも求められる。「大きく役割を担っていることは実感している。責任を持ってやっていかないといけない」。重圧と覚悟を胸に、上位入賞を目指す。

(謝花史哲)

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