漠然と過ごす日々にいとこの死…考えた人生 「命を預かる」パイロットへ


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来年1月からパイロットとしての人生をスタートさせる松本智恵美さん=2020年8月、佐賀航空(本人提供)

 【西原】人生の目標が見いだせず、高校に進学しなかった松本智恵美さん(28)=西原町=が、来年1月から県外の航空会社でパイロットとしての人生をスタートさせる。航空業界を志したのは、身内の死がきっかけだった。3月に県外の大学を卒業した松本さんは「夢をかなえさせてくれた両親や親類に感謝したい。これから人一倍親孝行する」と笑顔で語る。

 1992年、那覇市に生まれた松本さんは、地元の鏡原中学校を卒業後、高校に進学せずアルバイトに明け暮れた。「将来の夢もなかったから高校に通う意味を見いだせなかった」と振り返る。漫然と過ごす中、16歳の時に仲の良かった4歳上のいとこが、がんで亡くなった。「物心ついた時から大好きなお兄ちゃんだった」

 いとこの死を受けて、人生について考えるようになった。初めて死と向き合ううちに「人命に携わる職業」に就きたいとの思いを抱くようになった。気付いた時には、多くの人命を預かるパイロットが目標になっていた。

 中学時代に描けなかった将来の夢ができ、勉強漬けの日々が始まった。苦労の末、21歳で高卒認定試験に合格。翌年には神奈川にある上智大学短期大学部に進学し、24歳の時にパイロットを養成する第一工科大学(鹿児島)に入学した。同期は9人で、最年長だった。そして今年、第一志望だった県外の格安航空会社(LCC)への内定を決めた。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、入社は来年1月。地上研修や訓練など学生時代以上に忙しい日が始まる。それでも「亡くなったいとこの分も頑張りたい」。夢の「機長」になるまで努力はやめない。
 (吉田健一)

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