アンパンマンアイスが売ってない!大学生の声から沖縄明治がアイスのロゴを一新【WEB限定】


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アイスの新ブランド「okimei」のロゴに変わった沖縄明治乳業が販売するアイス類

 沖縄県内で牛乳やアイス、ヨーグルトなどの乳製品、飲料、デザートなどを製造販売する沖縄明治乳業(浦添市、村田紳社長)が4月、オリジナルアイスのブランド「okimei」(オキメイ)を発表した。創業52年。アメリカンクランチ、きなこもち、ちんすこうアイスなど、多くのオリジナル商品はすっかり県民に定着しているのになぜ今、ブランド名やロゴを一新するのだろうか。取材すると沖縄明治乳業のアイスに隠された意外な歴史が見えてきた。(玉城江梨子)

 

■沖縄だけで作っているのに…

 

 きっかけは、沖縄県外に進学した県出身大学生から聞いたこんなエピソードだった。

 

 幼い頃から慣れ親しんだアンパンマンアイスを食べたくてコンビニに行ったのに、どこを探してもない。(「アンパンマンアイス」とは、1990年から沖縄明治が製造・販売している「それいけ!アンパンマンアイスバー」のこと。ミルク味のアイスとチョコソースの組み合わせがおいしい、沖縄県民にはおなじみの商品だ)。ネットで調べると「アンパンマンアイスは沖縄限定」であり、沖縄で売られている「meiji」のアイスの多くは沖縄限定であるーーという事実。「沖縄明治乳業が独自で商品を作っているとは知らなかった」。採用試験などで多くの大学生から同じようなエピソードを沖縄明治は聞いた。

沖縄明治乳業が販売するオリジナル商品の一部

 「メードイン沖縄」であることが十分にアピールできていないことの影響は他にもあった。県外で開かれる沖縄物産展に沖縄明治のアイスを出してもロゴが「meiji」のため、沖縄県産品として認識されにくいという「実害」も出ていたのだ。
 

 「オリジナルでこれだけの商品を展開しているのに知られていない。もっとアピールする必要がある」。沖縄明治のオリジナル商品であることが一目で分かるように、ブランド名を「okimei」にして、ロゴも一新した。

 

■復帰とアイスの意外な関係

 

 一般的に「明治」と言えばお菓子や乳製品、飲料、食品などを扱う大手食品メーカーの「明治」(本社・東京)を思い浮かべる。明治は全国各地に支社や工場があるが、商品の企画から製造、販売まで行っているのは沖縄明治だけ。それには沖縄明治の成り立ちが大きく関わっている。

沖縄明治乳業本社=浦添市

 沖縄明治乳業は明治とパン製造のオキコ(西原町)が資本提携してできた会社だ。今はパンや麺で有名なオキコだが、元々は「沖縄興業」という社名で1947年に創業。当時は住宅用の屋根瓦を供給していた。その後、お菓子や麺類など食品事業を手がけるようになり、60年に「オキコ」に社名を変更。その一部門だった乳製品部門が本土の大手乳製品メーカー「明治乳業」(当時)と手を結び、69年、沖縄明治乳業が誕生した。日本復帰を控えた当時の沖縄では本土企業の進出が危惧されており、琉球政府は地元企業と本土企業の資本・技術提携や、系列への参加を政策的に促していたという背景もあった。

 

 オキコの一部門だった時代から独自で商品を開発、製造してきたこともあり、明治グループの一員となった後も沖縄明治乳業だけが、独自で商品を開発しているのだ。  沖縄明治乳業企画課の棚原道子課長は「好まれる味、郷土愛の強さなど沖縄は本土とは違う市場がある。明治グループの品質基準で、沖縄県民に向けた商品を作ることができるのは強み」と語る。

 

■なぜ沖縄で「えりまきトカゲ」?

 

 現在、沖縄明治のオリジナル商品はアイス・氷菓類53品、牛乳・飲料類40品、ヨーグルト・デザート9品に上る。アイスはシークヮーサー、「紅いもタルトアイス」や「ちんすこうアイス」など沖縄らしさが感じられる商品の一方で、「アンパンマンアイス」「えりまきトカゲ」のように、沖縄とは関係ないものもある。これはどういうことなのだろうか。

 

 「アンパンマンアイスは沖縄の子どもたちに喜んでもらうことを目的につくったもの。発売当時の値段は50円。お小遣いで買えて、しかも当時珍しかった当たりつきでした。キャラクターは子どもが一番好きなものにしたのではないでしょうか」と棚原課長。

 

 ブランド一新に合わせて4月に復刻した、40代以上の県民にはなつかしい「えりまきトカゲ」はどういう意図だったのだろうか。

 

 「これは単純に当時ブームだったからと聞いています。食品に動物のパッケージというのはあまり使わないのですが、『えりまきトカゲ』が売れたので『ヤンバルクイナ』ができました」と意外なエピソードを明かした。

 

復刻した「えりまきトカゲ」

 

■ワクワクするコラボも!  

 

 「okimei」へのブランド一新に合わせて、商品のロゴを順次変えていくほか、これから17商品を新発売する。4月は前述の「えりまきトカゲ」と「アメリカンクランチ」のチョコ味を発売した。5月は石垣の塩を使ったカップアイス。そして6月には県内企業とのコラボ商品を予定している。棚原課長は「県民がワクワクするコラボになっている」と自信を見せ、「コロナで暗いニュースが多い中、新商品発売で少しでも明るい話題を届けたい」と意気込んだ。

 

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